琴ノ若 懸賞は元横綱祖父の仏壇に 師匠の父、母、先代のおかみさん…家族への感謝抱いて立つ土俵

[ 2020年3月22日 09:15 ]

<大相撲春場所14日目>錦木(左)を上手出し投げで破った琴ノ若(撮影・坂田 高浩)
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 新型コロナウイルスの感染拡大により、史上初めての無観客で開催されている大相撲春場所。その場所に新入幕が重なった琴ノ若が14日目に勝ち越しを決めた。母方の祖父が横綱・琴桜、父は元関脇・琴ノ若で師匠の佐渡ケ嶽親方。偉大な祖父、父も果たせなかった新入幕での給金直しを、22歳の幕内最年少は苦しみながらも成し遂げた。

 勝ち越しに王手をかけてから4連敗で迎えた錦木戦。「吹っ切ってやるしかないなと。考えすぎずに思い切り体をぶつけていこうと」。右を差して左上手を取ると前に出た。鋭い出足で体勢が崩れた相手を、引きずるような上手出し投げで破るのは容易なことだった。歓声のない中、勝ち名乗りを受けると「もち吉」から懸けられていた懸賞を手にした。

 東十両だった昨年九州場所、2日目に幕内・霧馬山に勝って初めての懸賞4本を手にした。父である師匠に渡そうとしたところ「先代(師匠)にお供えしなさい」と言われ、佐渡ケ嶽部屋にある祖父の仏壇に供えた。今場所の懸賞はこの日で5本目となったが、師匠や母であるおかみさん、祖母である先代のおかみさんに渡すことに決めている。「自分がもらえるのはまだ先。(懸賞)1本じゃ収まりがつかないぐらいお世話になっているので」。相撲一家に育った琴ノ若は、感謝の気持ちを持ちながら土俵に上がっている。

 懸賞にまつわるエピソードは、父の佐渡ケ嶽親方にもあった。長男である琴ノ若が生まれた97年11月19日の翌日だった九州場所12日目、現役だった父は寺尾に勝って1本の懸賞を得た。「赤ん坊だったころはベビーベッドにずっと入れていた」という懸賞は、今でも大事に取ってある。それから22年。弟子となったことで敬語でしか話さなくなった息子は、自分の元に懸賞を届けに来るようになった。

 佐渡ケ嶽親方は琴ノ若が子供のころ、義理の父である先代師匠から「甘やかすな」と言われたことがあるという。だが、琴ノ若の祖父である先代師匠はその次の日にウルトラマンのクッションを琴ノ若に買ってきたそうだ。孫はやはり、掛け値なしにかわいかったのだろう。

 琴ノ若が将来、大関に昇進した場合、「琴桜」を襲名することになっている。現役時代に猛牛と呼ばれた先代師匠が亡くなってから12年7カ月。大きな可能性を秘めた琴ノ若の幕内での挑戦が始まった。(記者コラム・佐藤 博之)

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