“ドーハの悲劇”回避しスペインから帰国の途へ もはや他人事ではないコロナ感染

[ 2020年3月18日 09:00 ]

13日、スペインの首都マドリードで、サンチェス首相が非常事態を宣言するスクリーンを見る人
Photo By ゲッティ=共同

 搭乗予定の航空機が欠航する一報が入ったのは出発前夜だった。競泳の平井伯昌コーチの指導する萩野、大橋、小堀、青木、白井、今井のスペイン・シエラネバダ合宿の取材を終えた直後の13日午後7時頃。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、14日午後5時25分マラガ発、イスタンブール行の運行がキャンセルとなった。イスタンブール経由で成田空港に向かう予定だったが、旅程変更を余儀なくされた。

 近くスペイン政府が非常事態宣言を出すとの情報も入ったため、滞在が長引けば帰国できなくなる危険性や、帰国後に一定期間の隔離を強いられる可能性も否定できない。日本時間は夜中3時。本来は上司に報告後に新たな航空券を手配する必要があるが、事態は一刻を争う。許可を得ないまま、新たな帰国ルートを探し始めた。

 最初に検索に引っかかったのは、14日午前マラガ発で、パリ経由で成田に着くエールフランス便。価格も9万円台とお手頃だったため、迷わずに購入手続きを進めた。氏名、生年月日、クレジットカード番号などのデータを入力して購入ボタンをクリックしたが、入力中に座席が埋まったらしく購入に失敗。再び検索し直すと、同便で28万円台のビジネスクラスのチケットが出現した。

 「有事だから許されるよ。You、買っちゃいなよ」。甘いささやきと、部長の優しい顔が一瞬、頭をよぎったが、決定力を欠き断念した。約30分の格闘の末に、グラナダ発、バルセロナ、ドーハ経由、成田行のカタールエアー便を9万円台でゲット。搭乗時間だけで約17時間、乗り継ぎを入れると、24時間超のハードな移動だが、一刻も早くスペインを脱出するために即決した。

 14日早朝にシエラネバダのホテルを出発。グラナダ空港で飛行機の出発を待つ間には、乗客の間で「バルセロナ空港が閉鎖されたらしい」とか「カタールがスペインからの飛行機を拒否しているらしい」などの噂が飛び交った。客室乗務員に「バルセロナからカタールに飛べるのか?」と尋ねると「今のところ大丈夫そうだが、1時間後のことは誰にも分からない」との返答。不安を抱えたまま機上の人となった。

 バルセロナ空港は通常通り運営されており、出国を含めたドーハ行の便への乗り継ぎにも、なんなく成功。空港職員によると「ドーハに入国はできないが、乗り継ぎは問題ない」とのことだった。“ドーハの悲劇”をまぬがれ、成田空港に到着。入国時には滞在都市などの事情聴取や問診を受けることもなかった。無事に帰宅した2日後。サッカー担当時代に番記者としてお世話になった日本サッカー協会の田嶋幸三会長の新型コロナウイルス感染という衝撃的なニュースが飛び込んで来た。欧州滞在歴があるだけに、決して他人事ではない。潜伏期間とされる2週間は息のつけない状況が続く。(記者コラム・木本 新也)

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