データで見る八村の第37戦 敗戦の中にあった「一歩前進」の21・3%

[ 2020年3月4日 15:36 ]

リバウンドをキープするウィザーズの八村(AP)
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 バスケットボールではどの選手が“中心”なのかを数字で明確に表すことができる。それがユーセージ・レート(USAGE・RATE)。USAGEは「利用」「取り扱い」という意味があるが、バスケの世界ではオフェンスの「負担率」と言ったほうがいいかもしれない。

 計算の対象になる数値はその選手の出場時間、フィールドゴール(FG)とフリースロー(FT)の試投数とターンオーバー。フリースローは1回で2本与えられるケースが多いので、1本につき0・44本扱いとなる。つまり何を表現したいのかと言えば、コート上にいる当該選手がオフェンスの際にチーム全体の何%ほど“フィニッシャ―”として仕切っているか…である。コート上には常に5人しかいないので、全員が均等に攻めていれば20%。「大エース」がいればどんどんこの数値が増え、今季の1位はヤニス・アデトクンボ(25=バックス)の37・4%。彼はコートにいるとき、3回に1回以上、自分の手によって何らかの形でチーム・オフェンスを終えている。

 さてNBA全30球団で20%以上の選手がたった1人しかいないチームがある。

 それがウィザーズ。ご存知の通り、得点ランキングで2位(30・4)につけているブラドリー・ビール(26)がチームの大黒柱で、キングス戦でもチーム最多の35得点をマークしている。

 ビールの負担率はリーグ6位の34・2%。30%以上は15人いるので彼自身が特に目立っているわけではない。しかし他のチームと大きく違うのは、ビール以外は誰も20%に到達していないのである。

 2位はセンター兼フォワードのモーリッツ・ワグナー(22)で19・5%、そして八村塁(22)が19・3%で3位。つまりオフェンス面でのビールの「負担率」が傑出して大きく、それを理解していたキングスはこの試合でボールラインより後ろにビールがいても密着マークし(NBAではレアケース)、ボールを持てば随所でダブルチームを仕掛けてプレッシャーをかけてきた。35得点を挙げたものの、3点シュートの成功は8本中2本。スタミナを削られた影響でシュートの精度を落としたと言ってもいいだろう。

 ただしウィザーズは第2Q途中で28点を追う展開になりながら第3Q終盤から第4Q序盤にかけて4回同点に追いついた。「一極集中型」のチームが今までになかった猛追劇を演じることができたののはひとえに「負担率」を変更したからだ。

 ビールのアシストは8回。そのパスのターゲットに4回なったのが八村だった。これまでは前半に得点を稼ぎ、後半(とくに第4Q)になるとビールのための「壁」となるケースが多かったが、この日は違った。後半だけで16得点。FGの試投数は9だったがFT試投数は8(成功7)に達し、必然的に「負担率」は増えた。

 後半にたくさん使ってもらった?八村のキングス戦でのユーセージ・レートは21・3%(ビールは39・1%)。ここに猛追できた最大の要因があると思う。個人のアベレージではまだ20%に達していないが、もしウィザーズに2人目の20%超え選手が誕生すると、白星が増えそうな気がしてならない。(高柳 昌弥)

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2020年3月4日のニュース