元貴乃花親方、春場所無観客「仕方のないこと」菊水丸との対談で“思い”語った

[ 2020年3月4日 07:00 ]

相撲を題材とした「はっきよいゲーム」を楽しんだ元貴乃花親方の貴乃花光司氏(左)と河内家菊水丸(撮影・後藤 大輝)
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 【元貴乃花親方&菊水丸 スペシャル対談(上)】大相撲春場所(8日初日、エディオンアリーナ大阪)を前に、元貴乃花親方の貴乃花光司氏(47)と、伝統河内音頭継承者の河内家菊水丸(57)による対談が実現した。新型コロナウイルスの感染拡大で無観客開催を決めた協会判断や大関・貴景勝(23=千賀ノ浦部屋)ら元弟子への思い、春場所で大関獲りの朝乃山(25=高砂部屋)について2回連載でお届けする。(構成・筒崎 嘉一)

 菊水丸 日本相撲協会が春場所の無観客開催を決めました。元春場所担当部長としてこの判断は?

 貴乃花 お客様の安全第一を考えればのことですから、仕方のないことと思われます。ファンの皆様は残念至極に感じておられるはずですが、力士の感染も危ぐされます。ファンの皆様との接触も避けなければなりません。

 菊 2011年春場所は八百長問題で中止、翌夏場所はNHKの中継もない技量審査場所として開催したが?

 貴 技量審査のための開催は不可欠だろうと思います。ただ、力士同士の接触も本来控えるべきでしょうが(競技の特性上)判断は難しいところです。

 菊 では、初場所で11勝した貴景勝関は?

 貴 相撲界から離れてしまっているので(何か発信することで)混乱させたくないが、昨年夏場所で大関になれました。現役なんてアッと言う間。内容が濃ければ濃いほどそうです。現役の時は毎回死ぬような思いで準備して、土俵に上がってまた準備しての繰り返しでいい。

 菊 (貴景勝の取組中継がある)午後5時半、45分となると?

 貴 見なくても分かる。そこが本音です。

 菊 成績はだいたい当たります?

 貴 考えていること、やろうとしていることは伝わる。大関になれたんだったら横綱になるための道を進めばいい。遠目に見てます。

 菊 貴源治関は?

 貴 体は申し分ない。ところが、若さがもろさになるときがある。そこを補う日々の生活をしていけば自動的に上がっていける。あの子たちはしこ名に「貴」を受け継いだ。少々のことは辛抱してやっていくように言ってきた。今、一般の方でも貴の字がついている方がいらっしゃる。それは先代(大関貴ノ花)の貴、または私の世代で親御さんが付けたり。そして今度はあの子たちの貴を…となる。そういう連鎖を、受け継いだ価値はあると思う。

 菊 大関は所作が元親方に似てきた?

 貴 大事なことは昨年したような(右膝の)大きなケガをせず活躍できるかどうか。先場所はいい線までいった。今は大試練というか、それを自分の糧にするかで今後の地位が左右される。

 菊 (貴景勝の本名)佐藤君が入門したときに「必ず大関になりますから」と。

 貴 弟子それぞれにどこまで教えていいか計画を立てます。3日後まで考えて、でもその3日後、教えようと思っていたけれどやはりやめておこうとか。心の生き物というところが難しい。

 菊 角界は世代交代が進む。

 貴 貴景勝に限って言えば、「世代交代の真ん中に自分がいる」と思うと先が見えてこないかもしれない。本人が思うことではなく、結果が出たときに周りの方から言われること。(CM出演する)ヤクルトを飲んでしっかりやらなきゃ。ところで師匠、東京五輪が終われば関西では万博ですね?

 菊 2025年8月15日、大阪・関西万博の盆踊りで河内音頭を歌いますが、その前の地鎮祭が貴景勝関だったらいいなと。1970年の大阪万博は大鵬さんが地鎮祭をされました。

 貴 現役の時って時が経つのが早い。あっという間に30歳。だけど苦しんでやる価値はある。1日を3日と感じるほど苦しんでやる価値はある。あの背丈(1メートル75)でもう一つ上に行けたら財産です。馬力だけでは勝てない。馬力は息が上がってしまう。馬力を上手に使えるように。そこは鍛錬であって、平均値を上げることです。

 菊 貴景勝関が朝乃山関に敗れた初場所14日目は力が入りました?

 貴 土俵際、(朝乃山の)上手投げで転んだけれど、あそこでもう一回攻防があれば、未来の両横綱という感じ。攻防がある相撲はお客さんが盛り上がる。

 菊 春場所で大関獲りの朝乃山関は?

 貴 体が柔らかくてケガをしないんじゃないかと思う。大学から入って今、目いっぱいやってるんじゃないかな。

 菊 炎鵬関や照強関ら小兵の活躍もありましたが?

 貴 小兵力士は動きがよく見えちゃう。貴景勝や朝乃山が攻防のある相撲を取ればお客さんが本物を感じていく。お客さんは素人ですけど玄人ですからね。
 
 ○…貴乃花氏と菊水丸による春場所前の本紙対談は2017年から続く恒例企画。貴乃花氏は同年春場所が入幕2場所目だった弟子・貴景勝について「関取衆の稽古も部屋で盛り上がって、若い衆にはいい刺激になっている」と手応え。父の故二子山親方(元大関・貴ノ花)からの教え「土俵に上がったら、生き様を見せてこい。勝ちたいと思うな、力量を見せてこい」を弟子にも伝えていると明かしていた。

 ○…一昨年秋場所後、日本相撲協会を退職した貴乃花氏は昨年5月、相撲文化を国内外へ広めようと一般社団法人「貴乃花道場」を立ち上げた。拠点となる道場は持たず、土俵のある自治体などを訪れて指導する活動を続けている。また、2月9日には東日本大震災の復興支援イベントで宮城県多賀城市を訪れ、自身の現役時代を振り返る講演も行った。

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