サーフィン「凄い!」試技に高得点を!東京五輪で採点基準の統一性が重要

[ 2018年10月24日 09:30 ]

「ホワイトバッファローウィメンズ日向プロQS3000」に出場した前田マヒナ
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 採点競技において、採点基準の統一性が重要であることは言うまでもない。たとえ試合の主催者が異なっていても、だ。

 9月に愛知県田原市で行われたサーフィンのワールドゲームズ(WSG、世界選手権に相当)で、男子の五十嵐カノアが準優勝を果たし、54回の歴史で日本選手として初めてメダルを獲得した。同時に村上舜もカッパー(4位)を獲得。20年東京五輪の追加種目で、徐々に日本選手の活躍が増えてきている。

 だが、試合後の五十嵐のコメントに引っかかるものがあった。「ジャッジが認めてくれなかったのが悔しい。ベーシックなサーフィンをやらないと点にならない」。選手側の主張を額面通りに受け取るつもりはない。サーフィンは個々の技に基礎点は存在せず、あくまで総合的な判断で採点される競技。よほど恣意的で不当な採点ではない限り、選手側の主張を鵜呑みにするのは危険だ。一方で五十嵐の他にも、同様に疑義を呈する選手がいたのも事実。女子の日本代表だった黒川日菜子も「他の選手の採点で“これでこの点数?”と思うことはあった」と認めている。

 今回の出来事の背景にあると見られるのが、大会を主催する2つの競技団体の存在だ。五十嵐が日本人で唯一参戦しているプロ最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)や、その下の予選シリーズ(QS)は、プロ団体であるワールドサーフリーグ(WSL)が主催。一方でWSGは国際サーフィン連盟(ISA)の主催だ。五十嵐に限らず、男女のトップサーファーはWSL主催大会が主戦場。ISA主催大会に出場する機会は限られている。しかし東京五輪はISA主導でIOCに働きかけ、追加種目に決定した。本番での審判派遣や競技運営でも、ISAがイニシアチブを取ることになる。

 2つの団体が定める評価基準(クライテリア)を読むと、どちらも同様の文言が並んでいるのが分かる。コミットメント、技の難易度、革新性、発展性、コンビネーション、多様性、スピード、パワー、流れの良さ、などなど。両団体の主催大会でジャッジを務める審判員も存在する。実際、21日まで行われたWSL主催のホワイトバッファローウィメンズ日向プロQS3000(宮崎県日向市)では、2人がISAでも審判を務めている人間だったという。

 そういった共通項がありながらも、WSLで日本地区のマネジャーを長年務めている近江俊哉氏も、評価基準の違いが「あると思います」と認める。「ISAのルールはそれほどよく知らない」と前置きした上で、「WSLは常に毎年変化する革新的な技、難易度の高い技、コンビネーションや違いを組み合わせたサーフィンに注目している」という。いかにファンを魅了するかという視点に立った評価傾向になるのは、プロ団体としては当然。今後もこの傾向は変わらないはずだ。

 問題は多くの人の目に触れることになる東京五輪で、どのような評価基準が採用されるかだろう。「魅せる」競技である以上、たとえ初めてサーフィンを見る人にとっても「凄い!」と思った試技に高得点が出ることが望まれるが、WSGの傾向を見ると、やや不安が残る。両団体トップの話し合いは現在進行形というが、競技のさらなる発展のためにも、着地点を見いだしてもらいたい。(阿部 令)

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2018年10月24日のニュース