「平成最後の怪物」現る!乙黒拓 最年少19歳で世界王者

[ 2018年10月24日 05:30 ]

レスリング世界選手権第3日 ( 2018年10月22日    ハンガリー・ブダペスト )

レスリング世界選手権の男子フリー65キロ級で優勝し、日の丸を掲げる乙黒拓
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 男子フリースタイル65キロ級で、初出場の乙黒拓斗(19=山梨学院大)が日本男子最年少の世界王者に輝いた。決勝で8月のアジア大会覇者のバジュラン(24=インド)を16―9で撃破。74年大会を制した高田裕司(現山梨学院大監督)の20歳6カ月の記録を塗り替え、五輪、世界選手権を通じて日本男子初の10代金メダリストとなった。57キロ級では昨年覇者の高橋侑希(24=ALSOK)、92キロ級では松本篤史(30=警視庁)がともに3位決定戦を1点差で制し、銅メダルを獲得した。

 休みの日は部屋にこもって乃木坂46の動画を見まくる。普段の乙黒拓は物腰柔らかく、話し声は小さい。どこにでもいる19歳の風情だが、ことレスリングとなると話は別。周囲が「人が変わる」と言うほどの情熱と闘争心は世界でも通用した。

 「東京五輪までに早めに優勝することが目標だった。達成できてうれしい」。長い手足と左右への動きの速さを武器に、攻めてよし、守ってよしのオールラウンダー。前日の準決勝では強豪のロシア選手を攻め落とし、この日の決勝でもアジア大会王者を真っ向からねじ伏せた。序盤で豪快な投げ技を決めるなど5―0とリード。7―6と追い上げられ、第2ピリオドでは右足をひねったが「負けたくなかったので攻めるしかなかった」と萎えることなく優勝を決めて吠えた。

 最年少記録を塗り替えられた高田氏は「彼のレスリングは異次元。久々に出てきた怪物」と才能を称える一方で「日頃の努力が凄い」と競技に取り組む姿勢に目を細めた。兄・圭祐も「努力の天才」と弟を評するが、当の本人が「自分はそんなに努力してないと思う」としれっと言うところに強さの源がある。

 小学生の頃から山梨学院大の練習に参加し同大監督の高田氏とは長年の付き合いだ。乙黒拓は「いつも教えてもらっている監督の記録を超えたのは申し訳ないけどちょっとうれしい」とマット上とは打って変わった表情ではにかんだ。高田氏は70年代に五輪、世界選手権で計5度頂点に立ち“天才”とうたわれた。乙黒拓への期待も“東京五輪の金メダル候補”というだけにはとどまらない。

 ◆乙黒 拓斗(おとぐろ・たくと)☆生まれとサイズ 1998年(平10)12月13日生まれ、山梨県笛吹市出身。1メートル73。右構え。

 ☆兄とともに 山梨農林高で競技をしていた父・正也さんの影響で、今大会70キロ級代表の兄・圭祐(21)とともに4歳で開始。

 ☆タイトル歴 石和南小卒業後にJOCエリートアカデミーに入り、東京・帝京高でインターハイ3連覇。15年世界カデット54キロ級優勝。山梨学院大に進学し、今年6月の全日本選抜選手権は65キロ級で初制覇。

 ☆努力の天才 大学の授業の合間にもトレーニングルームに足を運び、一人でも練習場で汗を流す。兄・圭祐いわく「努力の天才」。高田氏も「あんな選手みたことない」と練習態度を称賛。

 ☆乃木ヲタ 乃木坂46のファンで、休日はもっぱら動画観賞。ライブでは「汗がジワーッとなって鳥肌が立った」と感激。推しは白石麻衣。

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