郷亜里砂、父仕込みのフォーム&得意コーナーで2強まくる

[ 2018年1月23日 11:00 ]

2度目の挑戦で初の夢切符をつかんだ郷
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 【平昌で輝け】平昌五輪の注目選手にスポットを当てた「平昌で輝け」を掲載していく。第1回は、スピードスケート女子で初めて代表に入った郷亜里砂(30=イヨテツスピードクラブ)を紹介する。

 ノルウェーでの94年リレハンメル五輪。酪農で有名な北海道別海町出身の楠瀬志保が夢舞台を駆け抜けた。女子1000メートルで6位入賞した地元のスターが、西春別スケートリンクの少年団に凱旋した時、郷はまだ小学2年。憧れの人を見た少女は、「別海町からでも五輪選手が出るんだ。私も頑張ろう」と胸に刻んだ。

 自宅からリンクまで徒歩3分。園児の時から銀盤を見て育ち、小学1年で氷上に立つとその目は輝いた。父・季良(ときよし)さんは「水を得た魚のようだった」と振り返る。「少年団でも、みんなより一段低かった。低くするのには力を抜きなさいと」。経験者である父仕込みの低いフォームで、一緒に始めた友人が競技を断念するほど地元では断トツの強さにまでなった。

 小4の全国大会でライバルに敗れて闘志に火が付いた。レース後、車中で毛布にくるまり号泣する娘を見て、「この子は強くなる」と確信した。ライバルに勝ち、新たなライバルを見つけて勝つために努力する長女。マイナス20度の世界で鼻水を垂らしながら特訓もした。高学年になり父は釧路まで1時間半も車を飛ばしショートトラックの練習。大学3年まで“二刀流”を貫いた。これがコーナーを得意とする原点だ。「こんなにスケートばかりやっていいんだべか」。だが、練習量はうそをつかなかった。父娘の念願はかない、町で楠瀬以来となる五輪代表になった。

 今季W杯女子500メートルで、郷が表彰台に上がった確率は80%。この種目で24連勝中の小平奈緒と五輪2連覇中の李相花(韓国)という2強を背後から追い続ける。現在4連続3位のメダル候補だ。「五輪でも表彰台に上がれるようベストを尽くしたい」。2度目の挑戦で手にした夢の切符。24年前に描かれた少女の物語はいよいよ完結編を迎える。

 ◆郷 亜里砂(ごう・ありさ)1987年(昭62)12月12日生まれ、北海道野付郡別海町出身の30歳。白樺学園高―山梨学院大。イヨテツスピードクラブ所属。ソチ五輪選考会は500メートル5位、1000メートル9位で落選。平昌五輪選考会は500メートル2位、1000メートル3位でともに代表入り。家族は父・季良さん、母・和代さん、兄・和宏さん、妹・真璃那さん。1メートル60、54キロ。

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2018年1月23日のニュース