小川Jr・雄勢14分1秒の死闘に思う…判定基準は均等に適用を

[ 2017年12月20日 13:30 ]

男子100キロ超級決勝、ゴールデンスコアの延長1分過ぎに勝利を確信しガッツポーズする小川雄勢(左)だったが、判定はポイントにならず試合続行
Photo By スポニチ

 なかなか終わらぬ熱戦を見ながら、ルール適用のあり方を考えさせられた。

 12月2、3日に開催された柔道のグランドスラム(GS)東京大会。2日間の大会の最後に行われたのが、男子100キロ超級決勝だった。講道館杯を制して勢いに乗っていた小川雄勢(明大)と、リオデジャネイロ五輪100キロ級金メダリストで今年から階級を上げているクルパレク(チェコ)との対戦は、4分間で決着が付かずにゴールデンスコアの延長戦に突入。1分過ぎ、小川の支え釣り込み足が一度は技あり判定されたものの、数秒間のビデオ検証の結果、取り消しに。結局、延長10分1秒、クルパレクに2つ目の指導が飛び、小川が優勢勝ちで初優勝。トータル14分1秒という死闘の後、延々と続くメディア対応に追われた愛息を見かねた父の直也氏が「今は酸欠で言葉が出てこないので」と強制終了させるほど疲弊した姿が印象的だった。

 両者の名誉のために言えば、10分間に及んだ延長戦は決して凡戦ではなかった。互いにディフェンス重視ではあったが攻める姿勢が見え、息が上がっても意地と意地がぶつけ合っていた。だからこそ、東京体育館のスタンドは沸き、「待て」が掛かった際には「試合終了か?」と息をのむ静けさが会場を包み、試合が再開されると拍手喝采だった。

 ただ、延長10分1秒で決着する前にも、何度か試合が終わるべきタイミングがあったのは事実だ。技によるポイントが付くような場面はなかったが、小川に、あるいはクルパレクに、指導が来るだろうとみられたシーンが何度かあった。そして問題に感じるのは、その試合を裁いた審判に試合を決着させる指導を判定させる意思が見られなかったことだ。

 今年適用された新ルールの下、通常の4分間を含めて指導が飛ぶタイミングは格段に早まった。そんな中で行われた14分1秒間の死闘だが、指導の判断基準が大会全試合を通じて平等ならばいい。しかし実際にはそうではなかった。序盤戦ではあっさり指導3累積による反則負けがあった。他の階級の決勝を見ても、今夏の世界選手権覇者の新井千鶴(三井住友海上)が敗れた女子70キロ級は、3分44秒で新井に3つ目の指導が飛んで反則負け。小川―クルパレク戦の熱闘を認めるところで、人間である審判の判定基準にばらつきが生じることをある程度は甘受しつつも、あまりにあっさりと決着が付いてしまった印象だった。

 全日本柔道連盟の山下泰裕会長は「国際柔道連盟(IJF)の執行部には、大事な試合を指導差で決着させたくないという思いがあるのでは」と内実を明かす。大会最後の試合が大熱戦で締めくくられてほしいという願いは理解できる。とはいえスポーツである以上、ルールや判定基準は均等、均質に適用されるべき。このジレンマが解消されない限り、柔道界は今後もルール変更を繰り返すことになるのではないだろうか。(阿部 令)

続きを表示

2017年12月20日のニュース