“レジェンド・オフィサー”ドクターストップ無視して金メダル

[ 2016年8月21日 05:30 ]

障害飛越で優勝した英国のスケルトン(AP)

リオデジャネイロ五輪・馬術 障害飛越 個人

(8月19日)
 人工股関節を埋め込んでいるので脚を高く上げることができない。だから愛馬ビッグスター号に乗るには踏み台が必要だ。16年前に落馬した際には首から背中にかけて2カ所も骨折。完治までには2年もかかり、主治医からは「今後は絶対に馬に乗ってはいけない」と強く言われた。

 「この年齢になってこんなことが起こるなんて信じられなかった」。馬術の障害飛越個人決勝は減点0で並んだ6人によるジャンプオフ(延長)となったが、ニック・スケルトン(58=英国)がミスなしでしかも最速タイムをマークして優勝。ずっと医者のアドバイスを無視してきた扱いにくい元患者は「ミスを覚悟で最初から飛ばしたんだ。ライバルにプレッシャーをかけたかったから…」と大きな賭けに出てその戦いに勝った。

 自分だけでなく愛馬も故障が癒えるのに2年の歳月を要している。しかし7度目の五輪では馬も人間も絶好調。58歳でのメダル獲得は今大会の最年長で、英国五輪史上では2番目の年長記録になった。

 12年ロンドン五輪では団体で金メダル。5つの階級に分かれる大英帝国勲章の4番目「オフィサー」をも受章した。受章者の中にはサッカーのデビッド・ベッカム氏(41)、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ(72)らも名を連ねているが、馬術のレジェンドはそこに新たな功績を加えて存在感を示した。

 「馬とともに無事にここにいるのはとても幸運。自分の競技人生を締めくくるいい結果になった」と50代になってから2個の金メダルを獲得したスケルトンは感無量の面持ち。1位58歳、2位44歳、3位48歳と馬術の障害飛越は中高年の“ビッグスター”たちが表彰台を独占してしまった。

 ◆ニック・スケルトン 1957年12月30日、英国ベッドワース出身の58歳。五輪は88年ソウル、92年バルセロナ、96年アトランタ、04年アテネ、08年北京、12年ロンドン各大会に出場。しかしメダルは12年ロンドンの団体(金)だけだった。1メートル75、76キロ。

 ▼7度目の五輪、58歳で障害飛越個人を初制覇して馬術史上最年長金メダリストになった時のコメント「引退は考えてない。(愛馬)ビッグスター号がやめない限り続けるよ」。

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