シンクロ銅支えた伝統の染色技法 リオの太陽に負けない輝き実現

[ 2016年8月21日 05:30 ]

シンクロナイズドスイミング日本代表がフリールーティンで着た水着

 スポーツウエアメーカー「デサント」の「アリーナ」ブランド、シンクロ水着開発担当の金子のぞみさん(34)は祈るような思いでテレビに見入った。天照大神(あまてらすおおみかみ)が放つ太陽の光を表現した黄色と、金色の箔(はく)が青空の下、ひときわ映えた。「リオの太陽のもとで選手の皆さんはキラキラと輝いて見えました。その輝きを少しでも後押しできたことを誇りに思います」と感激のコメントを寄せた。

 井村雅代監督が「演技、音楽、水着が三位一体」と話すように、水着はシンクロの戦闘服。デサントによれば、井村監督から「可能な限り軽く」「屋外プールのリオで強い太陽に負けない発色を」の2つの要望を受け、今年2月末から開発に着手。本番用の音楽を聴いてデザインを考えた。

 軽さを追求すると、生地が薄くなり発色性に欠ける。この壁を越えるため、開発チームは東レと共同開発した透けにくい特殊な生地を使った1枚仕立ての水着を作り上げた。新潟県十日町市の老舗の着物メーカーに依頼し、日本の伝統的な染色技法「手捺染(てなっせん)」で着色。世界ではデジタルプリントで表面に色を付ける染色法が主流だが、手捺染は生地の中まで染める。そのため、リフトなどで水着が伸びても生地の色が浮き上がることはない。リオの太陽の下、日本の伝統の技法が輝いた。

 開発チームは井村監督と何度も打ち合わせ。ほぼ完成した6月下旬、井村監督から「音楽、演技を少し変更する」と言われ、一から作り直すことになった。最終的に完成したのは、選手たちがリオに渡る直前だった。

 そんな苦労もあったが、銅メダルを手にして跳びはねて喜ぶ選手たちの姿を見て、金子さんは「私も涙がこみ上げてきました。この水着に携われたことは私の一生の誇りになりました」と感極まった。手捺染を手掛けたメーカーの常務、関口芳弘さん(64)も「無事役目が果たせてほっとした。東京五輪に向け日本のアピールに生きるんじゃないか」と話した。日本の最先端技術と伝統の技法の結集が、シンクロ日本を復活へ導いた。

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