浅見 1年前の悔しさ乗り越え涙の初V!

[ 2013年5月12日 06:00 ]

女子48キロ級で優勝し、表彰式で涙を流す浅見八瑠奈

柔道全日本選抜体重別選手権第1日

(5月11日 福岡国際センター)
 世界選手権(8月26日開幕、リオデジャネイロ)の代表選考を兼ねて行われ、女子48キロ級の浅見八瑠奈(25=コマツ)が1年前の悔しさを乗り越えて大会初優勝を飾った。ロンドン五輪代表の最終選考会を兼ねた昨年大会はまさかの1回戦負け。リードしていた代表争いも土壇場で逆転された苦い経験から立ち直って、8回目の出場で初の栄冠を手にした。12日の大会終了後、男女計14階級の代表選手が決定する。

 1年前の悔しさを晴らせたかは分からない。ここで勝っても逃した五輪は戻ってこない。ただ、浅見が見せた涙の理由は今年と昨年で大きく違っていた。「私1人だったら足を止めていたと思う。たくさんの人が一緒に戦ってくれて、また一歩を踏み出せた」と感謝の思いを口にした。

 「恩返し」の思いを結果で示した。初戦は硬さが見られたものの、相手に指導2が与えられて優勢勝ち。肩の力が抜けた準決勝は大外刈りで一本勝ちを収め、決勝も山崎珠美(山梨学院大)を矢継ぎ早に攻め立てた。小外刈り、体落としで有効を奪い、最後は一本背負いで仕留めた。

 昨年5月の代表落選直後、追い打ちをかけるように祖母の死に見舞われた。いつも応援に来てくれていた曽根吉代さんが白血病で入院。7月に77歳で亡くなった。「私のせいで病気になっちゃったのかな」。当時はそんな自責の念に駆られるような精神状態だったという。それでも「あの子は逃げなかった」とコマツの松岡義之監督は振り返る。参加は本人の意思に任されていた代表強化合宿に“補欠”としてでも足を運び、「出なくてもいいよ」と言われた実業団の大会にも出場した。

 家族の支えもあった。父・三喜夫さん(54)はロサンゼルス五輪代表から惜しくも落選した経験の持ち主。実家に帰ると、その父が「素直な心」「謙虚な心」「感謝の心」「あきらめない心」と書いた紙をそっと渡してくれた。チームメートや友人も同じように支えてくれた。おかげでつかんだ世界選手権の代表切符。「日本チームに勢いをつけるつもりで3連覇したい。自分が48キロ級の先頭に立って引っ張っていく」。失意の底から立ち上がった浅見が、今度は日本柔道を支える番だ。

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2013年5月12日のニュース