“1500の女王”吉川 3度目の1万で五輪内定!

[ 2012年6月9日 06:00 ]

福士に競り勝って優勝した吉川美香

陸上日本選手権第1日

(6月8日 大阪・長居陸上競技場)
 ロンドン五輪代表選考会を兼ねて行われ、女子1万メートルは、かつて06年から日本選手権1500メートルを5連覇した吉川美香(27=パナソニック)が31分28秒71で制し、五輪代表に決まった。01、05年の世界選手権男子400メートル障害の銅メダリスト・為末大(34=CHASKI)は、1台目のハードルで転倒するなど振るわず予選で敗退。五輪出場がかなわず現役引退となった。また、男子ハンマー投げは既に代表に決定している室伏広治(37=ミズノ)が72メートル85で18連覇した。

 勝負どころの9000メートル地点。福士の後方にぴたりとつけていた吉川が満を持してスパートした。1万メートルはこの日で3度目。歯を食いしばって必死にもがくと、優勝候補を一気に置き去りにしゴールに飛び込んだ。五輪の参加標準記録A(31分45秒)を突破する31分28秒71で初優勝。初の五輪キップも手にし「1500メートルのスピードを生かせて大満足。幸せを感じてゴールしました」と興奮気味に話した。

 これまで1500メートルを主戦場にしてきただけに、スピードはピカ一。観戦していたシドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子さんは、雨中でもラスト1周400メートルを66秒で走ったスピードに、「ケニア勢と戦えるのでは、というワクワク感がある」と称えた。

 神奈川・荏田(えだ)高から03年にパナソニック入社。それまでは無名に近い存在だったが、06年から日本選手権1500メートルを5連覇して「中距離の女王」に成長した。しかし、その一方で本人の心は「長距離志向」だった。「ずっと1万メートルを走る選手が夢だった」。1500メートルでは07年世界選手権で予選敗退、08年北京五輪の代表を逃し、転向を決断。昨年から本格的に1万メートルに挑戦した。

 それでもキャリアの浅さから、スタミナ不足を心配するパナソニックの倉林俊彰監督は5000メートルに絞ることを勧めた。だが、「どうしても諦められなかった」と吉川は1万メートルでの出場を直訴。「不安よりも走ってみたい気持ちが強かった」。モットーとする「粘り」の走法でこの種目を7度制した女王との一騎打ちを制した。

 男女を問わずアフリカ勢が幅を利かせている長距離に出現した新ヒロイン。「これまでアジアの選手がケニアやエチオピアの選手に離されるのを見てきた。戦いに参加できるスタミナをつけ、次は自分が引っ張りたい」と、晴れ舞台での真っ向勝負を誓った。

 ◆吉川 美香(よしかわ・みか)

 ★生年月日 1984年(昭59)9月16日、神奈川県相模原市出身の27歳。

 ★サイズ 1メートル55、39キロ。

 ★所属 パナソニック。

 ★中距離女王 日本選手権女子1500メートルで06年から5連覇。自己ベストの4分10秒00は、日本歴代3位。1万メートルは初挑戦の昨年10月の新潟の大会で、31分55秒06を出して参加標準記録Bを突破。2度目の出走となった今年4月の兵庫リレー・カーニバルで31分58秒73。

★目標 強く、見ている人に元気を与えられる選手。

 ★好きな芸能人 桜井和寿、瑛太。

 ★趣味 買い物とカフェ巡り。

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