為末大 5秒で五輪の夢散った…「これが人生最後のレース」

[ 2012年6月9日 06:00 ]

1台目のハードルで転倒する為末大

陸上日本選手権第1日 男子400メートル障害予選

(6月8日 大阪・長居陸上競技場)
 壮絶なラストだった。1台目のハードルに右足をひっかけた為末は、雨に濡れたトラックにダイブ。スタートして45メートル、約5秒でロンドン五輪への挑戦は終わった。だが、立ち上がってゴールまで駆けた。57秒64、予選2組最下位の7位。「これが人生の最後のレース。(転倒で)止まるのは大事なものがなくなる気がして、最後まで走った」。目に涙を浮かべ、現役に別れを告げた。

 01年のエドモントン世界選手権で3位に入り、世界大会で日本人初の短距離種目の表彰台に。05年のヘルシンキ大会でも、再び銅メダルを獲得した。だが、五輪ではシドニー予選落ち、アテネ準決勝敗退、北京予選落ちと結果を出せず。北京後、現役続行と引退の間で揺れた時、07年大阪・世界選手権と北京で惨敗した自分のうなだれる写真を入手。屈辱を目に焼き付けロンドンを目指したが、その道のりは険しかった。

 今後については、「スポーツを通じて社会の問題を解決していきたい。スポーツを使ってグローバルな交流をしていきたい」と前を向いた。速く走るよりもメダルを獲るよりも、壮大な夢がある。侍ハードラーの第二の人生の号砲が今、鳴った。

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