金はロンドンで…北島“価値ある”銀メダル!

[ 2011年7月30日 06:00 ]

銀メダルを獲得し、応援団に手を振る北島

水泳世界選手権第14日

(7月29日 中国・上海)
 男子200メートル平泳ぎ決勝で、五輪2大会連続2冠の北島康介(28=日本コカ・コーラ)は2分8秒63で銀メダルを獲得した。途中まで世界記録を上回るペースで飛ばしたが、終盤ダニエル・ジュルタ(22=ハンガリー)に逆転された。金メダルを逃し、ロンドン五輪出場も確定できなかった。それでも、100メートルの4位から立て直し、健在ぶりを示した日本のエースは1年後のリベンジを見据えた。

 金メダルだけを狙っていた。北島は伸びのある大きな泳ぎで序盤からトップに立った。150メートルまで世界記録を上回るペースだった。たが、ストロークのピッチを上げて勝負をかけると、ラスト15メートルで失速。追い上げてきた09年世界王者ジュルタに残り5メートルで逆転された。準決勝のタイムから0秒18秒上げる今季自己ベストの2分8秒63をマークしたが、金メダルには0秒22届かなかった。

 「悔しいッスね。勝負にいって負けたんで悔いはないけど、悔しいッス。最後は久々に真っ白になった。苦しむことが分かってトライした。悔しいけれど、僕には価値ある銀メダルだと思う」

 地獄の淵からはい上がってきた。4日前の100メートル決勝。優勝したダーレオーエン(ノルウェー)の驚異的なスピードの前に、自分のレースを見失い、4位でメダルを逃した。完全に力負けしたショックは尾を引き「(レースのない)2日間は苦痛だった」。それでも周囲の力を借りて、気持ちを立て直してきた。

 練習の中で恩師の平井伯昌ヘッドコーチから、手のかきと頭の突っ込みが早くなっていると指摘された。タイミングを修正することで力みが抜け伸びやかな動きが戻った。肉体面でも同コーチの指摘で、硬くなっていた股関節周りの筋肉をトレーナーにほぐしてもらうと、持ち味のキックがよみがえった。「100メートルから考えたら、200メートルでこんな泳ぎができるとは思っていなかった」。平泳ぎはちょっとしたズレで泳ぎが大きく変わる繊細な種目。五輪王者の修正能力は抜群だった。

 今大会で金メダルを獲得すれば五輪代表に内定する。力のある選手に余裕を持って五輪に臨ませる新ルール。北島のための選考基準と言ってもよかったが、ここで五輪切符を手にすることはできず代表決定は来年4月の日本選手権に持ち越された。だが、「勝負できたことがうれしい。来年に向けて大きく変われるチャンスがある」と前向きな気持ちを取り戻した。

 ラストの失速は4月の代表選考会で左内転筋を肉離れしたため「準備不足があった」(平井コーチ)のが原因で、練習さえ積めれば問題はない。北京五輪以来3年ぶりだった大舞台で再確認できたのは、再び世界一を狙える位置にいるということ。ロンドンでの目標を明確にした。

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