決断の時…“鉄人”杉山愛がラケットを置く

[ 2009年9月10日 06:00 ]

杉山愛

 女子テニスの日本の第一人者で、開催中の全米オープンで4大大会連続出場記録を62回に伸ばした杉山愛(34=フリー)が9日、今季限りで現役引退する意向を明らかにした。11日にニューヨークから帰国し、記者会見する。92年に17歳でプロ転向してから女子ツアーでシングルス6勝、ダブルス38勝を挙げたが、今季は不調で最新世界ランクも71位まで落ちていた。27日開幕の東レ・パンパシフィック(東京・有明)が現役最後の試合となる。

 全米オープンで敗退し、ニューヨークに滞在中の杉山はマネジメント会社を通じて今季限りでラケットを置く心境を明かした。「瞬間的に良いパフォーマンスができたとしても、年間を通じてそれができないと分かった時が、完全燃焼の時、引退の時だと考えていました」。4大大会今季最終戦を前に引退の決意を固めていたという。
 プロ17年目の今季は春先から不調が続き、ツアー18大会で初戦敗退が13度。体力の衰えからか持ち前のフットワークがフルセット続かず、最新世界ランキングも森田あゆみ(キヤノン)に抜かれ71位に後退した。「国際大会で戦うなら世界ランキングで20~30位の間で戦いたい」との思いで臨んできたが、4大大会は3大会連続でシード選手(32人)から漏れ、本戦からの出場が難しくなっていた。「来シーズンのことが見えていないのが正直なところです」と言うように、世界のトップで戦える自信は戻らなかった。
 母・芙沙子コーチと歩んだ「無事これ名馬」の現役生活だった。大型化が進む女子テニス界ではひときわ小柄な1メートル63。過酷なツアー転戦によるケガのため20代半ばで引退する選手も目立つ中、96年の伊達(現クルム伊達)公子引退後は日本女子のエースとして、ダブルス世界ランク1位や62回連続4大大会出場など大きな功績を残した。一番の思い出は03年3月、雨の影響で単複の準決勝、決勝の計4試合に勝ち両種目を制覇したステートファーム・クラシック(米アリゾナ州)最終日だという杉山。今後については「これからはテニスやスポーツを通じて恩返しをしていきたい」と05年に立ち上げたNPO法人を中心に選手育成や社会貢献活動に携わる予定だ。

 ◆杉山 愛(すぎやま・あい)1975年(昭50)7月5日、神奈川県出身の34歳。5歳からテニスを始め、15歳で日本人初の世界ジュニアランキング(ITF)1位。92年10月にプロ転向。97年ジャパン・オープンで単のツアー初優勝。4大大会は00年全米、03年全仏とウィンブルドンの女子複を制覇。混合複でも99年全米で優勝した。ツアー優勝は通算で単6勝、複38勝。五輪には96年アトランタ大会から4大会連続で出場し、04年アテネ大会では女子複で4位。世界ランクの最高は単8位、複1位。1メートル63、55キロ。

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2009年9月10日のニュース