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川崎F 絆深める家長シート 手書きメッセージで参加者募集 ベテラン選手にも新たな気付き

[ 2025年10月4日 09:25 ]

柏戦終了後に記念撮影する家長と招待された参加者(C)KAWASAKI FRONTALE
Photo By 提供写真

 手書きでメッセージをしたため、わざわざ指定された応募箱まで足を運んで投函する。スマホ一つで何でもできる時代にアナログな手法だが、手間を掛けるからこそ感謝の気持ちは何倍にもなって伝わるはず…。そんな思いが、サッカーJ1の川崎フロンターレに所属するMF家長昭博(39)がクラブの協力を得て進めてきた“家長シート”に反映された。

 5月からホーム戦招待企画「AKI 41 SPECIAL SEAT with infomart」として開催。背番号にちなんだ41人分の入場券を家長自ら購入し、川崎市の少年少女サッカーチームや子ども食堂・地域食堂の利用者ら毎回テーマを変えて招いてきた。6度目となる今回は小学生を含む学生が感謝の気持ちを伝えて試合に招待したい人を指定し、理由やメッセージを応募用紙に記入。応募&招待者のペア41組82人を選んだ。

 思いが込められた121件の応募用紙を精査した家長は「(内容が)良い悪いではない。選ぶ側のチョイスになってくるので心情としては難しかった」と選考に頭を悩ませたという。「でも、応募してくれた方に対して選ぶ責任がある」と自ら当選者を絞り込み「フロンターレの試合に誰かを招待したい、と応募してくれてありがたかった」と振り返る。

 大学生の庄野直時さん(18)は家族ぐるみで付き合う同じ川崎市在住の馬越龍太郎さん(80)を招待。「祖父のように慕っている人。今まで感謝を伝えたことがなかったので、こういう機会をいただけて良かった」と語った。

 両親や祖父母など家族、友人らに感謝を伝えたいという応募者が多かった中、ちょっと変わった関係性が目を引いた庄野さんと馬越さん。一見すると「祖父と孫」だが、血のつながりはない。そんな2人の関係は遠くアフリカに起源があった。

 庄野さんの祖父・石田興弌(こういち)さんは遠洋漁業、馬越さんは商社勤務でともにセネガル駐在を経験。1975年から80年代にかけて両家が現地で親交を深めた。庄野さんの母・みどりさん(50)も馬越さんの娘と同じ学校で幼少期の思い出を共有。帰国後も両家の深い交流は家族ぐるみで続いたという。

 2017年に興弌さんが亡くなると、同年代だった馬越さんは文字通り庄野さんの祖父代わりに。「住んでいる地域に行くと“今から会えますか?”と伝えたり、逆に連絡が来たり」。そんな関係の中で今回の企画を知り、家族で年間シートを持つ熱烈なサポーターの庄野さんが感謝を伝えるために応募した。

 初観戦した馬越さんは「試合前から人がこんなにいるなんて(地元の)武蔵小杉に住んでいて知らなかった。自分もファンになってしまうのでは。次は家族を連れてこようかな」と満足げ。庄野さんも「喜んでもらえて自分もうれしかった。また誘いたい」と話し、これまで以上に結びつきが強くなりそうだ。

 今回の企画で家長の意識も変化。応募メッセージを読む中で「俺は(気持ちを)全然伝えられてない。家族がいつも一番助けてくれていると思う。ちゃんと礼を言わないと」と自覚した。後日、家族に「そういうのが俺は足りない。感謝している」と伝えたという。

 招待シートの参加者とは毎回、試合後に記念撮影。簡単な交流も生まれ「あいさつしてくれる人や手紙を書いてくれる子どもたちもいます。試合を見て楽しんでいるのが伝わる。それが一番」と家長は話す。「いろんな人が手を貸してくれたり、自分が思っていない人が喜んでくれたりする。ちょっと(イベントを)やると、こういうことが起こるんだな、というのは勉強になっています」。参加者の絆を深め、ベテラン選手にも気付きをもたらす。好評のうちに進んでいる家長シートは、11月30日の広島戦が今季最後の開催になる。

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