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岡山学芸館 空き地からつかんだ悲願の県勢初V 高原監督号泣…21世紀版スクール☆ウォーズ大団円

[ 2023年1月10日 04:30 ]

第101回全国高校サッカー選手権・決勝   岡山学芸館3―1東山 ( 2023年1月9日    国立競技場 )

<岡山学芸館・東山>後半、ゴールを決め喜ぶ岡山学芸館・木村(左から2人目)(撮影・西海健太郎)
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 決勝が行われ、2大会連続5回目の出場の岡山学芸館が東山(京都)に3―1で勝利し、県勢として初優勝した。1―1の後半にMF木村匡吾(3年)が2得点。就任15年の高原良明監督(43)が、超高校級のスター選手不在で、過去16強が最高の“雑草軍団”をまとめ上げた。東山は同校初の決勝に進んだが、京都府勢として55大会ぶりの日本一には届かなかった。

 岡山学芸館が全国3883校の頂点に立った。試合を通じてボールを握られる苦しい展開だったが、持ち前の粘り強さで対抗。後半40分にMF木村匡がこの日2点目を奪い、勝利を決定づけても時間稼ぎをしない。常にゴールを狙うスタイルを貫いて、ついに岡山県勢初の優勝を手にした。「涙を流してきた数多くのOBの子たちに、少しは恩返しができたのかなと思います。夢の舞台で素晴らしい試合をしてくれた選手に感謝している」。高原監督は人目をはばからず号泣。その声は感動で震えていた。

 決して楽な道のりではなかった。サッカーの名門・東海大五(現東海大福岡)でプレーした高原監督は、03年から岡山学芸館で教員としてコーチを務めた。08年に監督に就任したが、当初は部室もグラウンドもなく、空き地で練習をしていた。照明もなく、冬場は車のライトを頼りにした。強豪校と練習試合をしたら2桁近い失点も喫した。遠征先の宿舎でタバコの臭いが漂っていたことも。「少しやんちゃな子が多かったですね。まだこんなチームがあるんだと衝撃的だった」と指揮官は振り返る。

 まさに舞台は21世紀の「スクール☆ウォーズ」。だが練習でともに汗を流し、マイクロバスの免許も取得して遠征先までハンドルを握った。体当たり指導も辞さなかった。「その子たちといかに本気で向き合えるか」。20人にも満たなかった部員は徐々に増え始め、現在は135人の大所帯になった。

 「今日、サッカーを見ている人に何か感動を与えることができれば。サッカー少年には岡山でも日本一を獲れるんだと夢を持ってもらえれば。まとまれば強豪を倒せる証明ができた」

 今大会は6試合で8人が得点し、計14ゴールした。Jリーグ加盟前のファジアーノ岡山でプレーして縁ができた岡山で歩んできた指導者人生。43歳の青年監督は、さらなる岡山県のレベル向上を見据えた。(飯間 健)

 《今井ら最少タイ3点で得点王》○…今大会の得点王は3得点で5人が並んだ。3ゴールでの得点王は93回大会に並ぶ最少記録。岡山学芸館のFW今井は決勝戦の前半25分にゴールネットを揺らしたが、判定は相手のオウンゴール。単独での受賞とはならず、「決勝でもゴールを奪いたいと昨晩から思っていた。決め切れるシーンもあったので、(得点王は)うれしいけど悔しい」と振り返った。

 ▽岡山学芸館 1960年創立の私立校。主な卒業生に、フィギュアスケートで北京冬季五輪団体銅メダルを獲得した小松原美里(倉敷FSC)、女子テニスの日比野菜緒(ブラス)、プロ野球日本ハムの金村尚真、お笑いコンビ「次長課長」の井上聡ら。野球部は春夏の甲子園に出場経験がある。

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