×

東京五輪で見えた世界との差はどうすれば埋められるのか

[ 2021年8月13日 22:00 ]

<日本・メキシコ>メキシコに敗れ号泣する久保
Photo By スポニチ

 【大西純一の真相・深層】男子サッカーのU―24日本代表が東京五輪の3位決定戦でメキシコに敗れて4位に終わった。53年ぶりのメダル獲得を狙ったが、まだまだ世界の上位と差があることを痛感させられた。

 1次リーグは3戦全勝で首位通過したが、決勝トーナメントでは一転して厳しい戦いになった。準々決勝ではニュージーランドにPK戦で辛勝、準々決勝ではスペインに延長戦の末に敗れた。3位決定戦では1次リーグで勝っているメキシコに1-3、内容的にはいい試合をしたが、結果は出せなかった。

 猛暑の中、中2日で戦い、リーグ戦とトーナメントの戦い方の違い、どこにピークを持って行くのかなど、五輪の難しさがある。五輪の男子サッカーは、オーバーエージ枠3人を除いて年齢制限があるが、プロも出場できる。53年前は、年齢制限がないが、プロは出場できなかった。プロリーグがあったイングランドやイタリア、スペイン、ブラジルなどは、A代表の選手は参加できなかった。ステートアマと言われた東欧の国が強かったのはそういう背景もあった。

 日本はプロがなく、日本代表選手は午前中は会社で仕事をし、午後からサッカーの練習をする会社員か学生。サッカーでいい結果を出しても、給料が上がるわけではないが、サッカーをやめても定年まで雇用される長所もあった。それでも、欧米のプロ以上に一生懸命練習し、日本代表の合宿や遠征は1カ月に及ぶこともあった。

 3位と4位の差は何だろう。メキシコ五輪の主力選手だった左ウイングの杉山隆一さんはメンタル面を指摘した。「僕らの方がチームプレーに徹していた。いまの選手はうまさは評価できるが、メンタルが物足りない。そこも強くなってほしい。生活や教育の違いだと思うが、武士の精神だよ」そして、プロとは何かと問われると、「契約すればプロではない。プロは自分に厳しく追求してほしい。我々はうまくはないが、代表としてのプライドは持っていた」

 サッカーに対してはいまの選手よりも意識が高く、練習もした。報酬はもらわなかったが、精神的にはプロだったというわけだ。

 釜本邦茂さんもメキシコ五輪で得点王になったが、練習量はすごかった。「チーム全員が、私に点を取らせようとパスを出し、私も絶対に決められるように猛練習した」周囲から認められるためには練習するしかなかった。釜本さんは所属していたヤンマーでは毎日、全体練習の後、1人で200本ぐらいシュート練習をしたという。日本代表の合宿では、杉山さんが左からクロスをあげ、釜本さんが受けてシュートする練習になった。怒鳴りあうこともあったが、2人とも一切妥協はしなかったという。実際、3位決定戦ではこの形で2点決めて銅メダルを獲得した。

 “プロ”は契約書にサインしたかどうかではなく、中身だということだ。出るからには勝つ、そのためには猛練習する。メキシコ五輪組の方が、精神的にはプロだったということだ。「プライド」や「武士の精神」は、メキシコ五輪組がよく口にする言葉だが、これは元々日本人が特性として持っていたもの。ここを磨けば日本のサッカーはまちがいなく、ワンランク上に行くはずだ。

続きを表示

2021年8月13日のニュース