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スタジアムを沸かせるJリーグ史上初となる福岡の“チア男(だん)” バトントワリング日本代表の実績

[ 2021年5月12日 17:22 ]

J初の男性チアリーダーとしてベススタでパフォーマンスを披露するTAKARA(クラブ提供)
Photo By 提供写真

 スタジアムを沸かせるJ1福岡の“チア男(だん)”が熱い視線を浴びている。アビスパのオフィシャルチアリーダーズ(アビチア)に所属するTAKARA(24、本名=米岡宝)はバトントワリングの日本代表で、Jリーグ史上初で唯一の男性チアリーダー。体育の非常勤講師としても奮闘中だ。勝った時に披露するベススタ名物“勝利のバック転”の連続回転は、余韻に浸る観客を楽しませている。

 
 しなやかなダンスと豪快なアクロバット。試合を彩る11人の「アビチア」の中でも、昨年デビューした男性チアリーダー・TAKARAの存在は、広いピッチ上でひときわ目を引く。

 「ダイナミックなパフォーマンス、女性に負けないキレのあるダンスは注目して見てほしい。360度にお客さんがいて、試合中は長時間ずっと踊り続ける。今までの環境とは全然違って、それが新鮮」

 バトントワリング日本代表で世界大会の銀メダルに3度輝く実績を持つトップアスリート。母校・熊本マリスト学園中高で体育の非常勤講師を務め、連日バトン教室も開催するなど多忙な毎日を送っている。

 母がバトントワリングの教室を開いていた。女性のスポーツの印象が強く、2人の姉と違い「男だったので期待もされず始めるきっかけもなかった」。5歳のときに、イベントで欠席者が1人出た際、練習を見て振り付けを全て覚えていたことで白羽の矢が立った。ぶっつけ本番で踊ったことで、バトンの道を歩み始めた。

 小学校でサッカー部に入り1年ほどバトンから離れたが、逆にバトンの魅力に気付きいたという。そこからは競技に没頭。高いレベルを求め、小5から毎週末に高速バスで福岡のバトンチームに通い猛練習。休日の練習は10時間にも及んだ。世界トップレベルの選手へ成長し、米ディズニーワールドでのパレードのダンサーや、木下大サーカスの熊本公演でオープニングを飾るなど活躍の場を広げてきた。バトンの魅力を「見ている人が楽しめるサーカスみたいな要素がある。僕の演技を見て笑顔になってくれる人がいる」と語る。

 バック転は小6でマスター。当時は演技に取り入れる選手はほとんどおらず「大会で初めて披露したときは会場がすごく盛り上がった」と振り返る。その特技が、アクロバティックな要素を求めていたアビチア入りにつながった。

 「Jリーグ初の男性チアリーダーに興味があった。バトンのパフォーマーとしていろんな所で活動していきたいタイミングだったので凄くうれしかった」

 流動的な動きが重視されるバトン競技に対し、チアは「止め、静の部分のシンクロ性」が重要で、経験のない「止まる」動きに最初は体がぱんぱんになったほどだった。

 前例のないJリーグのチア男。批判的な受け止め方を予想したが、世間は温かく迎えてくれた。「男性チアリーダーが増えていったら面白い。パフォーマンスの部分でも幅が広がるので2人目3人目を期待しています。勝利した瞬間や点が決まった瞬間に一瞬で華やかになるスタジアムの空気感が最高」と目を輝かせる。

 自身も現役アスリート。戦う選手への思いは強い。「大会に出ているときに応援がすごく力になる。自分が力をもらったからこそ、今はそういう力になりたい」。TAKARAが祝う“勝利のバック転”が今季どれだけ見られるのか楽しみだ。
 

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