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涙の連覇!!吉田「最強」奪還

[ 2008年8月17日 06:00 ]

連覇を達成し雄叫びをあげる吉田

 【北京五輪 レスリング】吉田が五輪2連覇で最強のプライドを取り戻した。レスリング女子55キロ級決勝で、04年アテネ五輪同級金メダリストの吉田沙保里(25=綜合警備保障)が許莉(中国)に第2ピリオドにフォール勝ちし、五輪連覇を達成した。今年1月に連勝記録は「119」でストップし、自信を喪失した女王だが、この日は1ピリオドも失うことなく圧勝。あらためて女王の強さを見せつけた吉田は、12年ロンドン五輪で日本女子選手初の3連覇を宣言した。

 流れる君が代に、涙が止まらなかった。「勝って泣いたのはいつだったかなあ…。でも、今回が一番泣けた」。4年前は泣かなかったが、この日は心の底から喜んだ。「本当にホッとしたんで」。1ピリオドも奪われなかったという圧倒劇は、アテネも同じ。ただ「何も怖くなかった」前回。「アテネとは全然、違う。もっともっといろんな物が詰まってます」。恐怖心を抱く自分にも勝った今回の方が、金メダルの価値は上だった。
 決勝の相手は中国の許莉。相手への大歓声の中で、第2ピリオド43秒、左足へのタックルからがっちり抑え込んでフォール勝ちした。「タックルを返されても(ポイントは)取り返せばいいと。前に出ようと思っていた」と振り返った。
 今年1月19日。中国・太原で行われた国別団体戦W杯で、バンデュセン(米国)に敗れた。海外選手に初黒星。連勝が119でストップ。屈辱の中で、吉田を苦しめたのは、最大の武器だったタックルが返されたことだった。栄和人監督に「(タックルを)返されるシーンが頭の中に浮かんで眠れない」と漏らした。
 部屋の壁に敗戦を伝える新聞のスクラップを張り、タックルに入った後の姿勢と動きを見直し、基本から練習をやり直した。「半年間、苦しい思いをして、不安で仕方がなかった」。だが、大舞台では一度もタックルを返されなかった。
 朝の練習場で栄監督からW杯の銅メダルを見せられた。「悔しさを晴らせ」。何度もうなずいた。決勝の時もメダルは監督のポケットにあったが、吉田にもう、鈍い色のメダルは必要ない。「ロンドン五輪でまた、3連覇を目指したい」。日本の女子史上初の個人種目3連覇を約束した吉田は、4年前とは違う、成熟した女王になっていた。

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2008年8月17日のニュース