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世界がシビれた!ボルト遊んで世界新9秒69!!

[ 2008年8月17日 06:00 ]

男子百メートル決勝で踊るようにゴールし、9秒69の世界新記録をマークしたウサイン・ボルト(右端)

 【北京五輪 陸上】衝撃的な世界記録の誕生だ。陸上男子百メートル決勝が16日に行われ、ウサイン・ボルト(21=ジャマイカ)が9秒69の世界新で優勝した。ゴール前で力を緩め、余裕のパフォーマンスを見せながら、自身が今年5月31日に樹立した世界記録を0秒03も更新。人類史上初めて9秒70を突破し、ジャマイカに五輪男子百メートルで初の金メダルをもたらした。

 残り20メートル。4コースを走っていたボルトは7コースのパウエルの位置を確認した。「遅い」。ライバルの失速を感じると両手を広げ、フィニッシュ前に胸を叩く余裕を見せた。レース途中だったが、21歳の若者にはフィニッシュラインなど気にもならない。「王者になるために、ここに来た。記録なんかどうでもよかった。勝てると分かった時は、それはもうハッピーな気分だった」。9秒69。無風で出た驚異の世界新に、9万人の大観衆はあっけにとられた。
 スタートの反応速度は出場8人中7番目。それでも、中盤からは圧倒的に長いストライドでライバルたちを置き去りにした。最後まで本気で走れば、ゲイ(米国)が6月に追い風4メートル以上でマークした9秒68の“人類最速記録”を上回ったはず。サンダーボルト(雷)の異名にふさわしいレースだった。
 昨年までの自己ベストは10秒03。もともと二百メートルと四百メートルが専門だった。百メートルはグレン・ミルズ・コーチが「二百メートルを強化するために走ってみよう」と今年から本格的に始めた種目。だが、すぐに10秒の壁を突破し、5月31日にはニューヨークで9秒72の世界記録をマーク。一躍、北京五輪の優勝候補にのしあがった。ニューヨークでは38歩で走ったが、決勝の歩数は41。1メートル96の長身ゆえに小刻みな歩幅を要求されるスタートは苦手。しかし、わずか3カ月の練習で弱点を克服し、出遅れを最小限に抑えた。
 急成長ゆえに国際オリンピック委員会(IOC)からは「警戒すべき選手」というレッテルを張られた。中国入りしてから受けた血液検査は3回。21歳の伸び盛りには厳しい視線が集まっていたが、それもクリアした。現在のスポンサーはレース後に黄金のシューズを贈ったスポーツ用品メーカーのプーマ社と、カリブ一帯で通信事業を請け負うディジセル社の2社。だが、金メダルを獲得したことでビジネス面での“出世”も間違いない。
 ジャマイカ北西部の農村出身。「落ち着きのない子だったけど、走り出すと落ち着いた」。そう振り返る母ジェニファーさんが「今年は息子のためにあるようなもの」と予言したとおりの金メダル。次の目標は84年ロサンゼルス五輪のカール・ルイス(米国)以来となる百メートルと二百メートルの短距離2冠。五輪史上8人目の快挙の瞬間が、まもなくやってくる。

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2008年8月17日のニュース