【ジャパンC】コントレイル有終V!最高の走りに福永涙「もうこんな馬には出合えない」

[ 2021年11月29日 05:30 ]

<ジャパンC>ラストレースを制したコントレイルの鞍上で目頭を押さえる福永(撮影・郡司 修)
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 海外からG1馬3頭が参戦した競馬の祭典「第41回ジャパンC」が28日、東京競馬場で行われ、福永祐一(44)騎乗の圧倒的1番人気コントレイル(牡4=矢作)がG1通算5勝目を挙げ、有終の美を飾った。獲得賞金は11億9529万4000円で歴代10位。レース後には引退式が行われ、無敗の3冠馬は亡き父ディープインパクトの後継種牡馬として、次なるステージへと向かった。

 言葉が出ない。壇上で万雷の拍手に祝福される福永の目から涙がこぼれる。日本競馬史上3頭目の無敗3冠馬が、3度の敗北を経て迎えたラストラン。雑音を、悔しさを振り払う完勝劇。「最後まで立派に走ってくれた。コントレイルは、本当に強いんです」。冷静沈着な男が号泣した。

 最後にして最高の走りだった。天皇賞・秋の敗因となったスタートが最大の課題。鞍上は「ゲート内で待たされると暴れてしまう」相棒を大外枠ジャパンの直前、17番目にゲートインさせた。思惑通りに好発を決めると、オーソリティ&シャフリヤールを前に見る絶好の中団を確保。「相手はこの2頭だと思っていた。考えていた通りの流れになった」。キセキの捲りで隊列が入れ替わった向正面も動じない。「今日、僕がしたことは馬を信じたことだけ」。コントレイルの力さえ引き出せれば、絶対大丈夫。

 勝利と敗北の思い出入り交じる府中の直線。残り400メートル、満を持して仕掛けた。300メートル、1歳下のダービー馬を置き去りにした。200メートル、同期オーソリティに並びかける。100メートル、抜け出した。独走のゴールイン。無観客開催だったダービーにはなかった大歓声が、3冠馬を出迎えた。

 11戦8勝、G1・5勝の軌跡は一筋縄ではなかった。1歳から2歳にかけて球節炎で半年ほど育成を中断。デビュー後も脚元と相談しながら走ってきた。無敗で2冠を制すると、“適性外”の菊花賞に向かった。「3000メートルを走れる馬じゃない。調教方法次第では1200メートルの馬にもなれる。でも、日本の競馬の歴史において必要なチャレンジだった」。菊の死闘の1カ月後にはアーモンドアイ、デアリングタクトとの3冠馬対決が待っていた。「ファンの思いに応えるために走ってくれた。本当にしんどかったと思う」。

 挫折を乗り越え、2年越しにつかんだジャパンCのタイトル。「もうこんな馬には出合えないんじゃないかな、と思う。この秋に競走馬として完成し、一番いい時に種牡馬になれるのは大きな意味がある。彼の子供がまた競馬の歴史をつくっていってくれるはず。ただ、願わくば、もっともっと多くの人にこの馬の強さを知ってほしかった」。福永はそう悔しそうに話したが、その強さを改めて知らしめた無上のラストランは、日本に競馬がある限り、語り継がれる伝説のレースとなったはず。コントレイルは無敗3冠馬としての名誉を守り、最強のまま、ターフを去った。

 ◆コントレイル 父ディープインパクト 母ロードクロサイト(母の父アンブライドルズソング)17年4月1日生まれ 牡4歳 栗東・矢作厩舎所属 馬主・前田晋二氏 生産者・北海道新冠町のノースヒルズ 戦績11戦8勝(重賞7勝目) 総獲得賞金11億9529万4000円 馬名の由来は「飛行機雲」。

 【ジャパンCアラカルト】

 ☆騎手 福永はJRA・G1今年4勝目で通算32勝目。ジャパンカップは8回目の挑戦で初勝利。

 ☆調教師 矢作師のJRA・G1勝利は18年から4年連続で通算14勝目。今年は米国で2勝、香港で1勝しており、同一年の3カ国G1制覇は角居元調教師、堀師に次いで3人目。

 ☆種牡馬 ディープインパクト産駒のジャパンC勝利は最多4勝目。G1勝利は2週連続で今年8勝目、通算67勝目。

 ☆父子制覇 ジャパンCで5度目となった種牡馬と産駒の父子制覇。その中でディープインパクトの父子は通算3組目(ジェンティルドンナ、ショウナンパンドラ、コントレイル)となった。

 ☆ホームの利 日本馬は06年ディープインパクトから16連勝中。
 《大幅ダウン》ジャパンCの売得金は215億573万2400円で前年比78・8%。3頭の3冠馬対決に沸いた昨年から減少した。

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