2016年NHK大河ドラマ「真田丸」

「真田丸」堺雅人が語る幸村像は「実務者」現実対処の市役所課長

[ 2016年12月10日 13:30 ]

大河ドラマ「真田丸」で真田幸村を演じる堺雅人(C)NHK
Photo By 提供写真

 NHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)は今月18日、最終回を迎える。1年にわたり、主人公・真田幸村を演じてきた俳優の堺雅人(43)は終盤の役作りについて「自分の中にいる別の人たちの声に突き動かされた」と回顧。大坂の陣における幸村の立場を“市役所の課長”と例えた。また、徳川家康(内野聖陽)という好敵手の存在が明確になるにつれて幸村の顔つきに変化が表れたと語り、最終回の撮影はいかにして徳川軍を仕留めるか“現実”に集中したことを明かした。豊臣秀吉(小日向文世)に仕えた実務者の面から、「日の本一の兵(つわもの)」と後世に名を残し、軍記物や講談で知られる猛将の面まで、堺が幸村像を語った。

 序盤の「上田編」に始まり、秀吉の側近となった「大坂編」、幽閉生活を送った「九度山編」を経て、再び戻ってきた大坂城で牢人たちの“リーダー”となった幸村。堺は後半は物語を引っ張っていかないといけないと思っていた」というが、その役割を自然に演じることができたという。

 「おもしろいもので、自分の中にいる別の人たちが幸村を突き動かしているんですよ。父(昌幸=草刈正雄)であり、石田三成(山本耕史)であり、秀吉であり、茶々(竹内結子)であり。幸村はいろいろな人たちの声に突き動かされるように動いていたので、自分でこうしなきゃ、ああしなきゃというのはあまりなかったですね」。出会ってきた人たちが幸村を形作った。「目の前の人に外側から引っ張られるのか、内側から押し出されるのかの違いで、結局、幸村は自分で何一つ決めたことはなかったんだという気もします。それは演じていて、おもしろいところでした」。“内側から突き動かされる演技”を楽しんだ。

 大坂編で人質として秀吉に臣従することになった信繁(当時)の生き様を「コネ入社の楽しいサラリーマン生活」と例えた堺だが、最終章の幸村の活躍はどのように映ったのか。

 「大坂冬の陣、夏の陣を演じている時、一番近いのは何かと考えたら、市役所の課長さんクラスがこんな感じなのかなと。任された現場でトラブルや非常事態が起きて、上との連絡が途絶え、その時に現場の最高責任者として決断するという状況が一番近いと思いましたね」

 常に家康が“対立軸”として描かれてきた今作。家康の存在が明確になるにつれ、幸村の顔つきにも変化が生じた。「同じ馬を走らせるシーンでも、最初は遠くに家康のような何かがあり、漠然としていました。終盤は漠然と真っすぐだった家康へのルートが次第に細かくジグザグになって、きっちり見えたというか。すると、顔もそういう顔になるのかなという気がするんです。より具体的になり、より情緒がなくなり、より現実的になり。しみじみとした思いは、どんどんなくなっていきますよね。やらなきゃいけないことが、具体的にどんどん決まっていくから。実務者の顔になるような気がするんですよ。私的な何かが消えて。それが僕は非常に好きです」

 第45回「完封」(11月13日放送)で徳川の大軍と対峙し「我こそは真田左衛門佐幸村!」と自らの名を轟かせた場面。そこで堺が意識したのは実務者としての顔だった。「自分の名前を名乗るというよりは『何とか警察の何とかです。止まりなさい』『何とか市役所土木課です。そこの車両止まってください』みたいな実務指示ですね。名乗って、そこに止まらせるというような気持ちで演じていました」

 最終回の鉄砲を使うシーンも「間合いが正しいかとか、方向が間違っていないかなどを考えていた」と頭の中は“現実”ばかりだったと告白。「演技がどうというよりも、一撃で仕留めるにはどうすればいいのかをシミュレーションしていましたね。あまり情緒はなく、現実的なことばかりを考えていた撮影でした。それは全体的に同じで、現実的なことばかりを考えていた1年2カ月だったような気がします」と総括した。

 残る放送は2回。堺の冷静にして熱い演技を見届けたい。

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