2016年NHK大河ドラマ「真田丸」

「真田丸」小林隆 三谷氏の呼び捨て「誇り」ズッコケ片桐且元に覚悟

[ 2016年10月9日 12:30 ]

大河ドラマ「真田丸」で片桐且元を演じる小林隆(C)NHK
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 NHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)で豊臣家の家臣・片桐且元を演じる俳優・小林隆(57)。今作の脚本を担当する三谷幸喜氏(55)が日大在学中に旗揚げした劇団「東京サンシャインボーイズ」出身で、フジテレビ「古畑任三郎」シリーズの向島音吉役や、大河ドラマ「新選組!」(2004年)の井上源三郎役など、過去の三谷作品で重要な役どころを担ってきた。三谷作品において欠かせない存在となっている小林が、今作で見せる熱演の裏側や劇団時代から続く三谷氏との関係について語った。

◆情けない男「史実と作家との板挟み」

 第20話「前兆」(5月22日放送)では、聚楽第の壁に書かれた豊臣秀吉(小日向文世)の悪口をうかつにも本人に報告。第25話「別離」(6月26日放送)では、秀吉の愛息・鶴松のために煎じた薬草の汁を捨ててしまう。目を覆いたくなるような“やらかし”を繰り返す且元に、演じる小林本人も「今回は情けない人間になっていまして…」と苦笑いを浮かべる。

 片桐且元という人物については、歌舞伎の演目「桐一葉」(坪内逍遥作)の影響から「カッコいい」というイメージを抱いていたという。しかし、今作で描かれた且元は、そのイメージとは大きくかけ離れた“ズッコケキャラ”。「作家(三谷氏)からも最初は『せっかくの大河だからカッコよくしたいよね』と言われていました。でも『めちゃめちゃ情けなくても面白いな』とも言っていたんですよ。そっちに舵を切っちゃったみたいですね」

 4月に大阪城天守閣で行われたトークショーに出演した際には、こんなエピソードがあったという。

 「大阪城天守閣の館長さんとトークショーをしたんですが、その方は片桐且元が大好きだったんですね。だから、会っていきなり『片桐且元は凄い人なんです!彼を主人公にしてドラマが作れるくらいの人物なんです!』と言われてしまいました。心の中で『今回はごめんなさい。僕のせいじゃないんですけど』と謝りましたね」

 小林も「且元がこんなに情けない人物でいいのか?」という思いが拭い切れず「史実と作家との板挟みになった」と笑って振り返る。だが、最終的には自身の考えを捨てて且元を演じることを決意。「出てくるたびにダメだから、聚楽第の事件からは振り切って(ダメな且元を)演じようと覚悟を決めました。劇団(東京サンシャインボーイズ)の頃から格好悪い役、情けない役っていうのは結構やっていましたから、懐かしい気持ちもありますね」と心境の変化について語る。

 実は、今作の且元のキャラクターには親しみを感じる部分もあったと明かす。「歴史上の人物というと、どうしても話を盛っちゃうというか、立派なイメージを持ってしまいがちですよね。でも今回の且元に限らず、人間的な部分というものはそれぞれが持っていたのではないでしょうか。等身大の歴史上の人物というか…。歴史に名を残した人物が常に立派だったかというと、そんなことはなかったのではないかと思います」

◆三谷氏と距離感変わらず「友達とは言いません」

 三谷氏が初めて大河ドラマの脚本を担当した「新撰組!」では最年長隊士・井上源三郎を好演。三谷作品で見せる“いぶし銀”の働きが光る。「今回もすごく難しいシーンを書いてくれるんですよね。ちょっと買いかぶりすぎじゃないかとも思ったりもします。でも、彼の中で『今の小林ならできる』と思ってくれているのかな。その期待はプレッシャーですけど、応えなきゃいけないなと思います。要求は高くなっていますが、うれしいことですね」と三谷氏からの“寵愛”に感謝する。

 また「劇団時代から距離感は変わっていない」と、三谷氏とは“不変の関係”。「やはり、劇団の主宰者とメンバーという関係ですね。彼は決して我々のことを友達とは言いません。エッセイ(朝日新聞夕刊木曜日連載『三谷幸喜のありふれた生活』)では、我々劇団員と大泉(洋)君だけ呼び捨て。ちょっと誇らしいところではあります。なぜ、そこに大泉君が入ってくるのかは分かりませんけど」

 9日放送の第40回「幸村」では、豊臣家と徳川家の間の交渉役として“板挟み”になる且元の姿が描かれる。“ズッコケ且元”最大の見せ場を前に、小林は「第40回は且元がずっとしゃべっています。大坂の陣へとなだれこむ大事な回になっていますよ」と予告した。

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