知床観光船事故 船体捜索で検討の飽和潜水とは?専門家が解説「海底生活を数週間続ける形に」

[ 2022年5月3日 17:37 ]

東京・赤坂のTBS社屋
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 海難事故に詳しい東海大学海洋学部の山田吉彦教授が3日、TBS系「Nスタ」(月~金曜後3・49)に生出演し、先月23日に知床半島沖で起きた事故で沈没した観光船の引き上げ作業について解説した。

 乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU 1(カズワン)」はカシュニの滝から1キロ沖、120メートルの海底で発見されたが、荒天や潮流の激しさなどから捜索は難航している。これまでに14人の死亡を確認し、いまだ12人の行方が分かっていない。海上保安庁は船舶事故への対応を専門とする民間企業と契約。国が費用を負担し、船内外の調査、捜索を行い、契約額は8億7700万円という。

 船内の捜索には、潜水士が海底の気圧に慣れた状態で海底に潛る飽和潜水が検討されている。山田氏はこの技術について、「潜水士が潜れるのは40メートル、4気圧くらいだと言われています。飽和潜水の場合は500メートルくらいまでは行けるのですが、それなりの準備は要する」と説明した。

 飽和潜水は、潜水士が潜る前に気圧を変えられるタンク内で24時間以上、体を慣らす必要があり、潜水後の作業時間は長くても2時間ほどと言われている。作業が終了し、浮上した後は、同じタンク内でさらに約1週間、生活して地上の気圧に慣らすことが必要だという。山田氏は「1度作業に入りますと、海底生活を1週間以上、数週間、続ける形になるので、体にも負担がかかる。始める前に十分に健康診断を行ってからじゃないと準備に入ることができない。非常に難しい潜水方法です」と解説した。

 船体の引き上げ作業についても細心の注意が必要だという。「力がどこに加わるのかということと、バランスを崩しやすいということで、細いワイヤの1点に力が掛かるので、船体が割れるなどの問題もある。バランスを崩してまた落ちてしまうというようなこともあります」と指摘した。

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2022年5月3日のニュース