テレ東「鉄オタ道子、2万キロ」 リアリティーが光るドラマ

[ 2022年2月11日 08:00 ]

テレビ東京のドラマ「鉄オタ道子、2万キロ」で、一人旅を続ける大兼久道子(玉城ティナ)(C)「鉄オタ道子、2万キロ」製作委員会 
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】美しい映像と現実味のある展開。ドラマに見入る要素がそこにある。今年1月にスタートしたテレビ東京「鉄オタ道子、2万キロ」(金曜深夜0・52)だ。

 物語の舞台は、全国各地に実在する鉄道と駅、その周辺。これまで、駅としては、北海道・比羅夫、栃木・男鹿高原、静岡・奥大井湖上、福島・大川ダム公園、福島・早戸が登場した。

 主人公は、有名家具メーカーの企画営業として働く大兼久道子(玉城ティナ)。鉄道オタクで、休日は日本全国のローカル駅を目指し、一人旅を楽しんでいる。道子は各地で、地元の人々や、自分と同じような鉄オタ、旅人らと出会うが、そこで重大な出来事が発生するわけではない。そこにあるのは、道子がいとおしそうに鉄道を見つめる姿、楽しげに自然の中を歩く姿、おいしそうに弁当を食べる姿、何げなく人と話す姿だ。どちらかと言えば、旅行ドキュメンタリーに近い印象もあるが、約30分間の放送を見終わると、なにやら、極上のドラマに出会ったような満足感を得られる。

 まず、引きつけられるのが、ロケ映像の美しさだ。プロデューサーの村田充範氏は「職人が集まって、色彩や構図などを工夫しながら撮影した。例えば、スタイリストは事前に列車や現場の色合いを写真で確認しながら衣装のデザインを考えていて、完成した映像を見ると、山や湖、列車に衣装がマッチしているのが分かる。ドローンで空撮した映像は、鉄道ファンに『普通は見られない映像を見ることができて楽しい』と評価していただいている」と話す。

 そして、何より、魅力の源は、リアリティーだ。村田氏は「道子のキャラクターは、鉄道ファンの方々に協力してもらって造形した。鉄道の魅力、楽しみ方、マナー、経験などについてインタビューし、それを基に台本を作って、違和感がないか確認してもらっている。登場人物は、できる限り、現地の方々に出演していただいた。ロケをしていて、役者ではないことにスタッフが気づかないこともあった」と明かす。

 道子を演じる玉城ティナの存在感も特筆すべきだろう。村田氏は「道子のキャラクターに関して玉城さんに一切お伝えしなかった。監督は『演じたいように演じてほしい』と言ったが、結果的に『ほぼ玉城ティナ』になった。玉城さんにはクールなイメージがあるが、実際に接してみると、チャーミングで、いろんな人に好かれるタイプ。それに、真面目で、信念がある。道子を見て、いいな、と思うのは、玉城さんそのものだからだと思う」と指摘する。

 このドラマは全12話で、放送は3月末までの予定だが、タイトルには「2万キロ」の文字。鉄道絡みの「2万キロ」と言えば、1970年代後半に国鉄全線を乗り継いだ作家・宮脇俊三さんの名著「時刻表2万キロ」を思い出す。3月末の段階で道子はJR全線制覇には遠く、村田氏は「クランクアップした時、みんなが『もう一回やりたい』と言っていた。制覇するまで終わらない、という思いはある」と語る。

 「鉄道と旅」という従来のテーマを扱いながらも「今」を感じさせるドラマのシリーズ化を願う。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

続きを表示

2022年2月11日のニュース