「おかえりモネ」蒔田彩珠が若き演技派の本領 みーちゃんの嫉妬心体現 ドラマ中盤ネット大反響の一翼

[ 2021年9月3日 08:15 ]

連続テレビ小説「おかえりモネ」で未知の嫉妬心や葛藤を体現し、一際存在感を示した蒔田彩珠(C)NHK
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 女優の清原果耶(19)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は第15週「百音と未知」(8月23~27日)、第16週「若き者たち」(8月30日~9月3日)と主人公・百音をめぐる“四角関係”の恋愛模様を描き、関連ワードのツイッタートレンド入りが急増。SNS上で大反響を呼んだ。中でも存在感を示したのが、妹・未知役の女優・蒔田彩珠(あじゅ=19)。姉に対する嫉妬心や葛藤を見事に体現し、若手屈指の演技派が本領を発揮。“今作初のヒール役”となり、ドラマ中盤の盛り上がりの一翼を担った蒔田の魅力を探った。

 <※以下、ネタバレ有>

 朝ドラ通算104作目。清原とタッグを組んだNHK「透明なゆりかご」やテレビ東京「きのう何食べた?」などで知られる安達奈緒子氏が手掛けるオリジナル作品。朝ドラ脚本初挑戦となった。タイトルにある「モネ」は主人公・永浦百音(ももね)の愛称。1995年に宮城県気仙沼市に生まれ、森の町・登米(とめ)で青春を送るヒロイン・百音が気象予報士の資格を取得し、上京。積み重ねた経験や身につけた技術を生かし、故郷の役に立ちたいと奮闘する姿を描く。3日、第80話が放送された。

 蒔田は子役から活躍。2012年、10歳の時に是枝裕和監督(59)が演出したフジテレビの連続ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」で主演・阿部寛(56)の娘役。その後、是枝監督の映画「海よりもまだ深く」(16年)「三度目の殺人」(17年公開)、カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた「万引き家族」(18年公開)と起用され、是枝作品の常連となった。

 若手俳優の登竜門、大塚製薬「カロリーメイト」のCMキャラクターに起用されるなど、今後が期待される10代女優の1人。昨年10月に公開された河瀨直美監督の映画「朝が来る」で出産した子どもを特別養子縁組制度に委ねるしかなかった中学生の6年間を演じ切り、映画賞を総なめ。第75回毎日映画コンクールで女優助演賞の最年少記録を更新した。

 今回、16年前期「とと姉ちゃん」以来5年ぶりの朝ドラ出演となった蒔田が演じるのは、百音(清原)の2歳年下の妹・未知。勉強が得意で、堅実に先を読んで行動するしっかり者。不器用で意地っ張りな一面もあり、百音とは正反対の性格だが、昔から仲が良い。父・耕治(内野聖陽)と姉に代わり、自分が家業のカキ養殖を担おうと水産高校へ。大学には進まず、水産試験場に就職した。

 第4週(6月7~11日)は未知の愛称そのままのサブタイトル「みーちゃんとカキ」。第18話(6月9日)、カキの養殖をめぐり、祖父・龍己(藤竜也)や耕治と言い争いになった。

 「おじいちゃんもお父さんも、なんで高校生とか子どもとか言うの?私は地場採苗は絶対に必要だし、実現させなきゃいけないって思っているし、不可能じゃないって言えるだけのデータだって集めてる!高校生の自由研究とか、バカにしないでよ。本気で一緒にやってよ!」

 「さすが銀行員だね。お父さんって、お金の話ばっかり。具体的に論理立てて、できない理由を言う。お父さんにとって、お金で損することが一番の悪だもんね。返済が正義だもんね!そうやって、りょーちん(亮=永瀬廉)のお父さん(新次=浅野忠信)にも船、あきらめさせたもんね!りょーちんの家、あんなに大変だったのに!」

 ドラマ序盤から圧巻の演技を披露していたが、第15週「百音と未知」は輪をかけた芝居。第75話(8月27日)、船に戻らず行方不明になった亮は「オレ、もう全部やめてもいいかな?オレ、もう全部やめてぇわ。ごめん。オレ、やっぱモネしか言える相手いない」――。片想いをしている亮が肝心な時に頼るのは百音。スピーカーフォンで亮の本音を知った未知は、嫉妬心や島を離れた姉に対する思いが混じり合い、百音に強く当たってしまう。

 「なんで?りょーちん、ずっと頑張ってきたじゃん。高校卒業して、すぐ漁師になって。新次さんの代わりに、ずっとずっと頑張ってきたじゃん!なのに、なんで…なんで、いつまでもしんどい思いしなきゃなんないの?ちょっと良くなると、また何かあって傷つけられる。もう、気持ちボロボロだよ。逃げたいんだよ、ホントは。でも、逃げられないじゃん!だって、だって誰かが残んなきゃ!残んなきゃ…。謝んないでよ。ズルいよ。なんで、お姉ちゃんなの?」

 第76話(8月30日)は菅波(坂口健太郎)に対し「すいません。姉はいません。出掛けました。昨日会いましたよね?ここで。地元の、島の。姉はあの人(亮)のところに行きました。分かりませんでした?何か、空気感じませんでした?あの2人は昔から通じ合って…!」――。第79話(9月2日)は亮の“告白”に毅然と応じた百音に対し「私は、私のやりたいようにやる。りょーちんのことも。ごめん、さっき聞いてた。コインランドリーで話してたの。もうどうにかなりそうで、ハラハラしちゃったよ。てか、姉のああいう場面見る妹の気持ち、察して。何あれ。りょーちん、誰のことも好きにならないとか。そんなこと、ホントに思ってんだったら、りょーちん、つらすぎる。なのに、お姉ちゃんは…正しいけど冷たいよ。私が側にいる」――。今度は落ち着いた口調ながら、再び百音に感情をぶつけた。

 「悪者が1人もいない」と言われる今作だが、蒔田の演技がリアルなあまり、SNS上には「みーちゃん、八つ当たりはよくない」などの声が多数。もちろん未知の若さと不器用さゆえの言動だが、思わぬ“憎まれ役”に。「蒔田彩珠ちゃん、凄い。うつむいているだけなのに、もう悲しさとか後悔とか嫉妬とか切なさとか、いろんな感情が伝わってくる」などと絶賛の声が続出。若き演技派の面目躍如となった。

 登場人物の心の機微を一貫して繊細に紡いできた安達脚本に加え、“受け”の芝居も光るヒロイン・清原、亮の諦観をまざまざと表現した永瀬、「俺たちの菅波」と呼ばれる人気キャラクターに昇華した坂口との演技合戦。及川家の喪失感と再起を描いた第8週「それでも海は」(7月5~9日)、「きのう何食べた?」コンビ(内野&西島秀俊)が今作初の同一シーン共演を果たした第69話(8月19日)などに続く大きなうねりとなった。

 ドラマ序盤にインタビューしたチーフ演出の一木正恵監督も「朝ドラというフォーマットは、ヒロインたちの成長過程を視聴者の皆さんが見守って愛でていくのも醍醐味の1つなので、若手の中で演技力が突出している清原さんと蒔田さん、2人を揃えてしまうと正直『うますぎないか?』と思いました。ただ、今回は姉妹のストーリーも非常に重要な軸の1つ。ちょっとやそっとじゃない存在感を持つ人を妹役にキャスティングしたいと考えていました。オーディションはシンプルな設定しかないのに、どうして未知という人間のことが分かっているんだろうというぐらい、蒔田さんは完璧でした」と選出の決め手を説明。

 「実際は役のイメージよりも明るい人ですが、役に入ると、凄まじい集中力。それでいて、佇まいは普通の人。何も演じていないように見えるのにビックリしました。演技者じゃなく、まるでドキュメンタリーの中から連れてきた人みたいに、ストンとそこにいる強さがあります。本当に怖いぐらいのうまさです」と舌を巻いた。

 第20週(9月27日~10月1日)から第3部「気仙沼編」がスタート。百音は地域に根ざした気象の仕事に興味を持ち始め“あること”を機に地元へ戻ることを決意。ウェザーエキスパーツの気仙沼支社第1号の社員として故郷・気仙沼へ帰る。“袂を分かった”永浦姉妹が並び立つ日が来るのか、注目される。

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