石田直裕五段の現在地「研修会の子たちからめちゃくちゃパワーをもらっています」

[ 2021年7月15日 15:10 ]

第71期ALSOK杯王将戦2次予選1回戦で勝利した石田直裕五段
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 将棋の石田直裕五段(32)が14日、第71期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の2次予選1回戦で井出隼平五段(30)に勝利し、1組準決勝進出を決めた。強敵・藤井聡太2冠との対戦に向けて胸の高鳴りを素直に表す。ニューノーマル時代における、石田のモチベーションコントロールの一片を聞いた。

 この日に行われた2次予選1回戦では、ともに加古川青流戦優勝経験を持つ実力者同士のマッチアップとなった。勝者は藤井との対戦が決まる。石田は「2次予選の表が出来た時に、是非(藤井と)やってみたいなと思っていた」と集中力を高めてきた。

 戦型は井出のエース戦法・四間飛車。奨励会時代から研さんし合った仲だけに、「お互いに手の内を知っているので」と出だしはハイスピードで進行した。互いに積極的な指し回しを見せ「形勢が揺れ動いている感触はあったんですけど、具体的な箇所が分からなくてすごく難しい将棋だった」という。終盤、先手の2六桂に狙いを付け、「その歩が美濃囲いの攻めに効いてきたので、そのあたりでだいぶ視界が開けてきた」と切り崩しに成功した。

 「前期は2次予選の1回戦で負けてしまいましたが、何とか次に進むことができたのでまずは最低限(の目標達成)ですね」 

 朗らかでスマート。穏やかな表情と口ぶりで「解説が分かりやすい」とファンも多い。北海道名寄市出身。プロ野球の日ハムファンで、自身も日本将棋連盟の野球部「キングス」に所属し主にセンターを守る。現在、米大リーグで飛ぶ鳥を落とす勢いで大活躍中のエンゼルスの大谷翔平投手も日ハム時代から応援していたといい、取材中には同日の日中に行われたオールスターゲームの内容を気にする様子も見られた。

 「すごいですねー!いつもネットとかテレビで見ています。ニュースでは『藤井聡太か』『大谷翔平か』みたいによく流れてきますよね(笑い)。明るいニュースなので良いですね」

 趣味の野球で気分転換を図るほか、大きなパワーの源になっているのが2020年10月に札幌で開設された「北海道研修会」の存在だという。未来の棋士の育成を目指し、石田のほか屋敷伸之九段、野月浩貴八段、広瀬章人八段、中座真七段の北海道出身棋士5人が幹事を務めている。コロナ禍における行動制限で活動の範囲も狭められているが、幹事が交代しながら月に1回の帰道も「リフレッシュになっている」という。 

 「現在研修会には14人在籍していて、プロを目指している子もいるのですごく楽しみですね。その子たちの頑張りや活躍は、自分にもめちゃくちゃパワーをもらっています」

 声援を背に挑む次なる一戦は、2次予選決勝進出を掛けた藤井との大一番。「なかなか当たるのも大変な相手。すごく楽しみです」。過去唯一の対戦だった18年6月5日の竜王戦5組決勝では、藤井が指した「7七同飛成」の一手が升田幸三賞に輝き、石田は黒星を喫した。当時“AI超えの一手”と大きな話題を呼んだ一手に触れ、「そういう手だけは気をつけたいですね(笑い)。策を練って臨みたいと思います」と気を引き締めていた。

 石田が温める“策”はどんな名勝負を生み出すのか。注目の一番は7月30日に行われる。


 石田 直裕(いしだ・なおひろ) 1988年(昭63)12月5日、北海道名寄市出身の32歳。所司和晴七段門下。2012年10月、四段。同年11月、名寄市長特別賞受賞。14年、加古川青流戦で優勝。

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