藤井王位 天敵・豊島竜王に連勝止められた…スタイル貫けず「粘り方難しかった」

[ 2021年7月1日 05:30 ]

王位戦第1局で豊島将之竜王(手前)に敗れた藤井聡太王位
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 藤井聡太王位(18)=棋聖と2冠=に豊島将之竜王(31)=叡王と2冠=が挑む第62期王位戦7番勝負の第1局は30日、名古屋市の名古屋能楽堂で2日目が指し継がれ、104手で豊島が先勝した。藤井は自己最長1時間41分の持ち時間を残して投了する完敗。王位戦での連勝新記録15の樹立も逃した。今月13、14日、北海道旭川市での第2局を前に3日、切り替えて、初防衛へ王手をかける棋聖戦第3局に向かう。

 形勢を悲観した背中が丸みを帯びる。自ら踏み込んだ端攻め。逆サイドで端攻めのカウンターを食らい、角取りにと金をつくられた。「正確に攻められて苦しくなった。王が薄いので粘り方が難しかった」。盤面全体を見渡しても、逃げ場をなくした藤井角を失う一手に見合う代償が、どこにもなかった。

 終局は午後3時35分。持ち時間8時間のうち、1時間41分を残していた。通算43敗目(223勝)で最も考慮時間を残しての投了。勝っても負けても時間を使い切る、それが藤井スタイル。詰将棋解答選手権5連覇が示す終盤力への自信があればこそ、序中盤の読みに時間を割くことができ、4年連続8割超の勝率を支えた。その気力すら湧き出ない完敗だった。

 記録の申し子はまた新記録に王手をかけていた。王位戦での15連勝。前期、予選から勝ち上がり、85、86年に高橋道雄九段(61)が達成した14連勝に並んでいた。名人戦、竜王戦(当時九段戦)、ALSOK杯王将戦(スポニチ本社主催)に次いで誕生した伝統の棋戦に、35年ぶりの新記録が迫っていた。

 棋聖、王位の防衛戦に続いて先月26日、叡王挑戦が決まった。相手は豊島。王位戦7番勝負に25日開幕の5番勝負を合わせ、真夏の12番勝負。小学6年時、師匠・杉本昌隆八段(52)の研究室で練習将棋を指して以来、常に仰ぎ見てきた。

 直近の1月、朝日杯で初勝利したとはいえ初対戦から6連敗。「序盤の研究が深く、中終盤の鋭さや手厚さ、粘り強さ全てを備えている」。前日会見で率直に思いを語った、タイトル戦初対局。戦型はタイトル戦3連勝中の相掛かりを投入し、研究成果の正否を問うたがはね返された。「早い時間の終局になってしまった。第2局以降、熱戦にできるように頑張りたい」。渡辺明王将(37)=名人、棋王との3冠=を2勝0敗で追い詰める棋聖戦第3局は3日。立て直す時間は、まだある。 

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