「おかえりモネ」みーちゃん蒔田彩珠が若き演技派の本領 チーフ演出も舌巻く「怖いぐらい」ブレイク必至

[ 2021年6月13日 10:00 ]

連続テレビ小説「おかえりモネ」でヒロイン・百音の妹・未知役を演じる蒔田彩珠(C)NHK
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 女優の蒔田彩珠(あじゅ=18)がNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)にヒロイン・百音(清原果耶)の妹・未知役でレギュラー出演。若き演技派の面目躍如といった本領を発揮し、視聴者を魅了している。今作によるブレイクは必至で、チーフ演出の一木正恵監督も「まるでドキュメンタリーの中から連れてきた人みたいに、ストンとそこにいる強さがあって、本当に怖いぐらいのうまさです」と舌を巻く。一木監督に蒔田の魅力や撮影の舞台裏を聞いた。

 朝ドラ通算104作目。清原とタッグを組んだNHK「透明なゆりかご」やテレビ東京「きのう何食べた?」などで知られる安達奈緒子氏が手掛けるオリジナル作品。朝ドラ脚本初挑戦となった。タイトルにある「モネ」は主人公・永浦百音(ももね)の愛称。1995年に宮城県気仙沼市に生まれ、森の町・登米(とめ)で青春を送るヒロイン・百音が気象予報士の資格を取得し、上京。積み重ねた経験や身につけた技術を生かし、故郷の役に立ちたいと奮闘する姿を描く。

 蒔田は子役から活躍。2012年、10歳の時に是枝裕和監督(58)が演出したフジテレビの連続ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」で主演・阿部寛(56)の娘役。その後、是枝監督の映画「海よりもまだ深く」(16年)「三度目の殺人」(17年公開)、カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた「万引き家族」(18年公開)と起用され、是枝作品の常連となった。

 若手俳優の登竜門、大塚製薬「カロリーメイト」のCMキャラクターに起用されるなど、今後が期待される10代女優の1人。昨年10月に公開された河瀨直美監督の映画「朝が来る」で出産した子どもを特別養子縁組制度に委ねるしかなかった中学生の6年間を演じ切り、映画賞を総なめ。第75回毎日映画コンクールで女優助演賞の最年少記録を更新した。

 今回、16年前期「とと姉ちゃん」以来5年ぶりの朝ドラ出演となる蒔田が演じるのは百音の2歳年下の妹・未知。勉強が得意で、堅実に先を読んで行動するしっかり者。不器用で意地っ張りな一面もあり、百音とは正反対の性格だが、昔から仲が良い。父・耕治(内野聖陽)と姉に代わり、自分が家業のカキ養殖を担おうと水産高校に進み、勉強に打ち込んでいる。

 第6話(5月24日)、未知は漁師見習いになった百音の幼なじみ・及川亮(永瀬廉)と久しぶりに再会。短い時間ながら近況を報告し合って別れると、左手でガッツポーズを作って小躍り。憧れの先輩への胸キュンぶりを、蒔田が見事に体現した。

 そして、第4週(6月7~11日)は未知の愛称そのままのサブタイトル「みーちゃんとカキ」。未知は家業はもちろん、気仙沼の漁業の未来まで視野に入れ、夏休みの自由研究として、カキを卵から育てる「地場採苗」に挑戦。永浦家は石巻や松島の生産者から種ガキを毎年購入し、自分の養殖場で大きく育てて出荷している。種ガキから作れれば、カキが消える心配はなくなり、経費削減にもつながる。

 第18話(6月9日)、浮遊幼生(カキの赤ちゃん)をくっつけて育てる原盤(ホタテの貝殻)を海から引き揚げるタイミングをめぐり、未知は祖父・龍己(藤竜也)と衝突。龍己が「たかが高校生の自由研究」「(水深が深い気仙沼の浅瀬に支柱を)誰が立てるんだよ!設置費用は?失敗したら、その金はどうなるの?」とたしなめ、銀行員の父・耕治が3年前の東日本大震災の被害による借金のため「今、未知の夢にまでは手が回らない。今から本気で家で地場採苗をやるのは無理なんだよ」と諭すと、未知の感情が爆発した。

 「おじいちゃんもお父さんも、なんで高校生とか子どもとか言うの?私は地場採苗は絶対に必要だし、実現させなきゃいけないって思っているし、不可能じゃないって言えるだけのデータだって集めてる!高校生の自由研究とか、バカにしないでよ。本気で一緒にやってよ!」

 「さすが銀行員だね。お父さんって、お金の話ばっかり。具体的に論理立てて、できない理由を言う。お父さんにとって、お金で損することが一番の悪だもんね。返済が正義だもんね!そうやって、りょーちん(亮)のお父さん(新次=浅野忠信)にも船、あきらめさせたもんね!りょーちんの家、あんなに大変だったのに!」

 茶の間の空気が一変する渾身の演技。SNS上には「朝ドラで泣く。蒔田彩珠ちゃん、なんて自然で気の入った演技するの?若さとか関係ないね。もう大ファンだよ」「蒔田彩珠ちゃんの演技に鳥肌立ったし、鼻の奥がツーンとなった」「それにしても蒔田彩珠さん、凄い役者さんになられましたね。藤竜也さん、内野聖陽さん相手にこんなドスの効いた啖呵を切れるなんて」「『朝が来る』でも見たこの陰のある表情。これだよ、これ。蒔田彩珠の真骨頂」「演技オバケたちのぶつかり合いだった。蒔田彩珠、圧巻」「今朝は蒔田彩珠劇場。朝ドラ妹枠としては、これだけのベテラン連れてくるのは珍しいと思っていたが、こーゆーことか!」「蒔田彩珠ちゃん、ホントうまいなぁ。じーちゃんやお父さんに声荒げている時にTシャツの裾をイジイジしていて、そういう細かい仕草がリアル。彼女は演技しているんじゃなく、実際みーちゃんになってるんだろうなぁ」などと称賛の声が相次いだ。

 蒔田と初タッグとなった一木監督も「蒔田さんといったら元々、特別なオーラをまとっていますよね」と以前から注目。「朝ドラというフォーマットは、ヒロインたちの成長過程を視聴者の皆さんが見守って愛でていくのも醍醐味の1つなので、若手の中で演技力が突出している清原さんと蒔田さん、2人を揃えてしまうと正直『うますぎないか?』と思いました。ただ、今回は姉妹のストーリーも非常に重要な軸の1つ。ちょっとやそっとじゃない存在感を持つ人を妹役にキャスティングしたいと考えていました。オーディションはシンプルな設定しかないのに、どうして未知という人間のことが分かっているんだろうというぐらい、蒔田さんは完璧でした」と選出の決め手を明かした。

 カキ養殖に関する実践的な動きは、撮影の数日前からロケ地に入り、指導を受けた。第17話(6月8日)の冒頭には、海に浮く「カキ棚」の上から原盤を海中に入れるシーンもあり、一木監督は「カキ棚から海に落ちるとカキに傷つけられて『タダじゃ済まない』と言われるほど危険でして、細心の注意を払って練習しましたが、蒔田さんは1時間ぐらいで(丸太のようなもので碁盤の目に組まれたカキ棚の上を)平均台のようにバランスを崩さず軽快に渡り歩いていて、運動神経も抜群。水産試験場から色々な実験装置を借りて、操作の仕方を勉強してもらいましたが、のみ込みも早かったですね」と振り返り、さらに絶賛の言葉が続く。

 「実際は役のイメージよりも明るい人ですが、役に入ると、凄まじい集中力。それでいて、佇まいは普通の人。何も演じていないように見えるのにビックリしました。演技者じゃなく、まるでドキュメンタリーの中から連れてきた人みたいに、ストンとそこにいる強さがあります。本当に怖いぐらいのうまさです」

 編集作業に入って、あらためて蒔田の凄さに気付かされることもある。

 「先の話になりますが、未知の進路をめぐる父・耕治とのシーンが印象に残っています。私は蒔田さんに割と強めに“ある台詞”を言ってほしかったんですが、蒔田さんは気持ちは強く持ちながらもアウトプットとしては柔らかめ。決してオーバーアクトしない、日常に落とし込んだ表現なんですよね。現場でOKを出した時も、このシーン全体として締まった緊張感が素晴らしいと思いましたが、後から編集でよくよく分析してみると、私のディレクションであからさまに蒔田さんの演技の何が変わるということはなく、ほんのちょっとした目やほっぺの動きがあるぐらい。抑えた芝居の中から未知のイラ立ちのような感情がにおい立ってくるんです。こちらの演出は余計だったかな?と教えられるような感覚。やっぱり怖いぐらいにうまいとしか言えないですね」

 今後の演技合戦が一段と期待される。

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