歌唄い・二宮愛(下) カーペンターズも魅惑カバー 「人間力をお届けしたい」

[ 2021年5月12日 10:00 ]

YouTubeチャンネルが人気の二宮愛
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 【牧 元一の孤人焦点】シンガー・ソングライターの二宮愛(31)のYouTubeチャンネルに魅了されたのは、実は、カーペンターズ「遙かなる影」のカバーを聴いたからだ。

 この曲は声を張り上げる歌ではない。言い換えれば、歌唱力を誇るような人が歌いそうな曲ではない。どちらかと言うと、静かで、淡々としている。けれど、きっと、実際に歌ってみると、かなり難しい曲に違いない。数多くの人がカバーしているが、カレン・カーペンターの歌を聴いた時のように心を動かされた経験がこれまでなかった。

 二宮愛は静かに、淡々と歌い始める。気負いは全く感じられない。しかし、どこにも流されない。確固たる音が続いていく。心地いい。カレンより少し渋く厚みのある声が次第に艶やかさを増していく。温かい。歌に対する彼女の覚悟、そして、これまでの人生がそこにこめられているように感じる。最後のリフレインのところで、期せずして涙腺がゆるんだ。

 二宮愛はこう語る。

 「幼い頃から、カレンの歌を聴いていました。あこがれていた歌手の1人です。ほかのシンガーから『カーペンターズの曲を歌うとカレンに似せようとして、ものまねのようになってしまう』という話を聞いたことがあります。カレンの声は唯一無二。まねをしても絶対に勝てません。カーペンターズの曲をカバーするのなら、オリジナリティー、自分の芯を出せるようにしようと思って、ものすごく練習しました」

 彼女はこれまでシンガー・ソングライターとして活動して来た。自分の個性は、自らが作る曲に込めて表現すれば良かった。ところが、誰かの曲をカバーする場合は、オリジナルのイメージがある。その曲がヒットしていればいるほど、そのアーティストに熱烈なファンがいればいるほど、オリジナルを乗り越えるのは難しくなる。称賛されることもあれば、批判されることもある。楽曲のカバーは実はハイリスクの試みだ。

 「シンガー・ソングライターと言うからには、オリジナルを歌うべきだという固定観念がありました。でも、YouTubeチャンネルを始めて、カバー曲を歌う方が難しいと思いました。オリジナル曲、自分が書いた曲を自分らしく歌えるのは当たり前の話で、既に有名でみなさんの中に入り込んでいる曲を自分なりに料理して提供するためにはスキルが必要だと気づきました。単純に歌って、ただの『歌うま』になるのが怖い。聴いていただく方々に、表現力、人間力をお届けしたいと思っています」

 その試みは着実に成果を出している。クイーン「ボヘミアン・ラプソディ」やカーペンターズ「遙かなる影」はその一端だ。音楽の好みは人それぞれだから、他のカバー曲に涙する人も多いに違いない。現在までにカバーしたのは100曲。その数がこれから増えれば増えるほどファンの数も増加していくだろう。

 昨年6月のYouTubeチャンネル開始から間もなく1年。登録者数は既に8万7000人を超え、10万人に達する日もそう遠くはなさそうだ。

 「正直、びっくりしています。ここまで急激に伸びるとは思いませんでした。夢は大きく、ダイヤモンド(登録者数1000万人以上)まで頑張りたいです」

 大きな夢は、魅惑的なカバー曲を生み出す原動力になる。楽しみは、尽きない。

 ◇二宮 愛(にのみや・あい) 1990年(平2)2月2日生まれ、神奈川県出身の31歳。2012年、ボーカルを務める「matthews」が初アルバム「Girls Like Dream」を発売。14年、TBS「UTAGE!」に出演し、その歌唱力が話題に。15年、初のカバーアルバム「From The Kitchen Corner」を発売。17年、ミュージカル「レ・ミゼラブル」でファンテーヌ役に。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。 

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