渡辺王将スイープか、永瀬王座逆襲か 両者背水の乱打戦 王将戦第4局第1日

[ 2021年2月14日 05:30 ]

スポニチ主催 第70期王将戦7番勝負第4局第1日 ( 2021年2月13日    東京都立川市・SORANO HOTEL )

<第70期王将戦第4局第1日>盤上を見つめる永瀬王座(左)と渡辺王将(撮影・吉田 剛)
Photo By スポニチ

 3連覇を狙う渡辺明王将(36)=名人、棋王との3冠=の開幕3連勝で迎えた第4局は夕刻から早くも激闘モードに入った。細かいジャブの応酬から後手の渡辺が思い切りよく先攻し、挑戦者・永瀬拓矢王座(28)も負けじと対抗する打撃戦へ。午後6時、71手目を永瀬が封じて指し掛けとなった。第2日は14日午前9時に再開する。

 西の空に日が沈み、富士山の稜線(りょうせん)が淡く浮かぶ午後5時43分。65手目の▲4四桂と永瀬の好打を浴び、渡辺が長考に沈む。このまま封じ手か…とその瞬間、△同銀と動く。その後はテンポよく4手進行。指し掛け直前とは思えない応酬を経て永瀬が封じる意を示した。

 「もう中盤戦から終盤戦。ここから穏やかな展開になることはないでしょうね。駒と駒がかなりぶつかってますから」と眼光鋭い渡辺。対する永瀬も「そろそろ終盤戦に入ったかなと。激しくなったのかなという感じがします」とコメントをそろえた。

 54手目の△6四歩は渡辺が三段目に並んだ自身の銀桂を生かす目的の「つっかけ」だ。以降の細かいやりとりで両者とも銀桂を持ち駒にし、相手の傷口を狙う。現代将棋らしい高いレベルでの攻防戦。第1日を終えた盤面は先手も後手も撤退が死を意味する背水の陣に見える。

 渡辺が勝てば2期前の第68期(19年1~2月=対久保利明王将)以来、2度目のスイープとなる。現行制度の王将戦7番勝負でストレート勝ちした棋士は第18期(1969年)の大山康晴王将(当時)をはじめ、渡辺で6人目だ。だが複数回達成したのは、5度もマークした羽生善治九段1人しかいない。渡辺は泣く子も黙るレジェンドの領域に踏み込もうとしている。

 「駒損なので、向こうの飛車が中ぶらりんの間に何らかの代償を得たいですね」。やや押されている状態で一夜の熟考に入った渡辺に、連続防衛という名のバレンタインチョコは届くのだろうか。

 《封じ手は?》
 ▼正立会谷川浩司九段 ▲4五飛の一手。その後の手順をしっかり考えるために、ここで封じたのだろう。
 ▼副立会中川大輔八段 本命は違うが、▲7二銀も考えられる。8筋に効いている後手の飛車をいじめる狙い。
 ▼記録係田中大貴三段 ▲4五飛しかない。飛車を捨てる展開になると、厳しくなるから。

 《SORANO HOTEL 初実施に「背筋伸びる」》「SORANO HOTEL」は絶景の温泉プールを擁する都市型リゾートホテルで、20年6月開業。将棋のタイトル戦の実施は初めてで、宿泊担当の鶴岡良祐さん(36)は「緊張感が独特。背筋が伸びる」と話した。熱戦を支えるため、特に食事面に注力。1カ月前から会議を重ね地元食材を使った和食ベースの特別メニューを考案した。料飲担当の菊元悠祐さん(42)は「次はぜひ、王将戦の全対局をやってもらいたい」と笑った。

続きを表示

この記事のフォト

2021年2月14日のニュース