渡辺王将 劇的連勝、最終盤にドラマ 永瀬得意の相掛かり撃破、3連覇へ油断なし

[ 2021年1月25日 05:30 ]

スポニチ主催 第70期王将戦7番勝負第2局第2日 ( 2021年1月24日    大阪府高槻市・山水館 )

<王将戦第2局>連勝しインタビューを受ける渡辺王将(撮影・奥 調)
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 渡辺明王将(36)=名人、棋王との3冠=が永瀬拓矢王座(28)に120手で勝利し、開幕2連勝とした。永瀬得意の相掛かりを長い終盤戦の末、撃破。永瀬優勢の最終盤、2択で正着を逃すドラマが大熱戦を物語った。第3局は30、31日に栃木県大田原市の「ホテル花月」で指される。

 最終盤にドラマが待っていた。渡辺の116手目△8八飛成(第1図)の王手に▲7八歩の合駒がきかない。二歩のためだ。

 その7手前、永瀬が▲7三成桂ではなく▲7三歩成で王手をしていれば、116手目の王手に歩合いができた。持ち駒の金合いではその金を取られた後、攻め駒として逆用される。つまり109手目での渡辺の投了もあった。負けを悟った永瀬は静かに黒のマスクを装着し、投了を告げた。

 「▲7三歩成なら負けにしたと思った」と渡辺。永瀬は「(▲7三歩成でも)一応詰まない気がした。(120手目)△5五銀を勘違いして、組み合わせを間違えて詰まされてしまった」と淡々と振り返った。

 終盤の大逆転を、解説の糸谷哲郎八段(32)は「タイトル戦では珍しいがこれが将棋の醍醐味(だいごみ)」と指摘した。その要因として、局面が進むほど、トッププロ同士でも大逆転が起こりうる競技特性を挙げ「永瀬王座は勝ちを手にしかかっていた。渡辺王将は後手番で連勝発進した。この差は大きい」と、一手の判断が招いた落差を物語った。

 3連覇へ向けて前進した。王将戦の過去69期で連勝発進した王将はのべ22人中20人が防衛した。ただ、失敗した2人のうちの1人が前回陥落した渡辺。第64期、挑戦者・郷田真隆九段(49)に第3局以降●●○●●の3勝4敗で失冠した。「(第3局が)来週すぐにある。疲れを取って臨みたい」。自戒を込めるように決意を明かした。

 永瀬のエース戦法を打ち破った。永瀬の先手での相掛かりは過去20勝3敗、・870の高勝率。昨秋、王将戦挑戦権を勝ち取ったリーグで木村一基九段(47)、羽生善治九段(50)から勝利した。

 この日、控室を訪れた谷川浩司九段(58)は「7番勝負で星を2つ離されるのは嫌」と、永瀬にとっての第2局の重要性を説いていた。事実、自身の第41期からの4連覇では全て第2局を制してきた。棋界随一の努力家で知られる挑戦者。そのド根性が試されている。(筒崎 嘉一)

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