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藤井2冠 正月恒例インタビュー!「21年はそれまで以上に大きな舞台での対局増やしたい」

[ 2021年1月2日 05:30 ]

将棋盤を前に真剣な表情の藤井聡太2冠(撮影・吉田 剛、河野 光希 )
Photo By スポニチ

 将棋の藤井聡太2冠(18)がスポニチ恒例の正月インタビューに応じた。昨年の同企画で「タイトルを目指して頑張っていきたいです」と締めた藤井は、その言葉通り7月に棋聖、8月に王位を連続奪取。史上最年少2冠に駆け上がった。躍進の2020年が終わり、2021年はどんな活躍を見せてくれるのだろうか――。(聞き手・我満 晴朗)

 ――新年明けましておめでとうございます。
 「おめでとうございます」

 ――新年早々ですが2020年を簡単に振り返っていただけますか?まず2月4日の順位戦で高野秀行六段に勝ち9連勝。C級1組からB級2組に昇級を決めました。
 「順位戦の昇級は毎年一つの目標にしていますし、前期が(1敗を喫し)昇級できていなかったので、かなりホッとしたところはありました」

 ――その直後の2月11日、朝日杯オープン戦準決勝で千田翔太七段に敗れてしまいました。3連覇を逃した悔しさについて。
 「その準決勝の将棋は結構完敗だったのでそんなに悔しいという感じはなかったんです(苦笑い)」

 ――千田七段の研究手にはまってしまったように見えましたが。
 「こちらがバランスを損ねてしまったところがあったので」

 ――そして3月末、2019年度の成績が53勝12敗となり3年連続勝率8割超を達成。羽生善治九段もできなかった史上初の快挙でした。
 「(勝率8割を)気にしたことはなかったんですけど、対戦相手のレベルがだんだん上がっていると思うので、その中で結果を残せたということは自信になることかなあ、と」

 ――新年度に入り、4月10日の菅井竜也八段戦以降は政府の緊急事態宣言下で約2カ月、対局がありませんでした。
 「全て用事がなくなる状況だったので結構のんびりと過ごしたところはありました。ただ時間はあるので、その中で自分の将棋を振り返ってみることはしました」

 ――緊急事態宣言が解け、6月からは怒濤(どとう)の3カ月。棋聖、王位と2度タイトル挑戦、2度のタイトル奪取、瞬く間に史上最年少2冠となりました。
 「6月は調子が良くて、挑戦者決定戦に2回勝つことができましたし、内容的にもうまく指せた対局が多かったのかなという気がします」

 ――2冠を獲得し、秋以降は第70期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)挑戦者決定リーグを中心とした対局日程。そのリーグは3勝3敗で来期陥落という不本意な結果になってしまいました。
 「挑決リーグは、やっぱり出だしで(9月22日の羽生戦、10月5日の豊島将之竜王=叡王と2冠=戦に)連敗したのが相当痛かったですね…当然ですけど(苦笑い)」

 ――2局目の豊島竜王戦は特に、ですか。
 「あれがかなり痛かった気がします」

 ――最終盤はほぼ勝勢と追い込んでいただけに。
 「そうですね。(豊島の)粘り強さというのも自分では見習わなければならないと感じました」

 ――よく「調子がいい、調子が悪い」という表現があるのですが、あの頃は自分の中で調子が悪かった?
 「調子とは何かというのが決まっているわけではないので、そういう言葉でいうのが適切かどうか分からないのですが、そうですね…6月と比べると状態が良くないといったところはありますね。まあそれも実力なので。仕方がない、それに向き合っていくしかないと思います」

 ――昨年は藤井2冠の対局をネット中継で観戦するファンが増えたようです。そのネット中継でトレンドになったのが1手ごとに勝率を示すソフトの評価値ですが、ご自身の対局を見直して評価値を確認することはあるのですか?
 「いや、ないです」

 ――その評価値の表示についてはどう評価していますか?
 「将棋は見ているだけではどちらがいいのかプロでも分からない対局が多いくらいなので(笑い)ファンの方々には分からない部分も多いと思います。その中で、評価値という分かりやすい指標があるというのはいいことなのかなと。ただその指標は絶対的なものではないので、そこに少し留意してもらえたらいいかなと思いますし、解説する棋士の方も、数字だけで表し切れない部分というのを解説していく必要があるのかなとも思います」

 ――中継の評価値を見て、自分の感覚とだいたい合っているものなのか、それとも違和感を覚える方が多いのか、どうなんでしょう?
 「普段(対局で勝率の)パーセンテージを考えることはあまりないので、どうでしょう?当然、自分の感覚と違うこともありますし、自分の使っているソフトと違うということもありますし、いろいろあるなあという感じですね」

 ――羽生九段は「あの評価値は楽観的過ぎる」と指摘していましたが。
 「(数値が)大きく出るということですね。終盤はそういう傾向があると思います。序盤、中盤に関してはそういうことはないですね。終盤は大きく出るのですが、ソフトとはそういうものなので。終盤の局面で勝ち筋が一つだけだとして、それが難しい手順だとしても、ソフトがそれを見つけていれば九十何%とかいう数字が出る。それ自体は仕様というか、仕方ない。その辺の微妙なところを棋士が伝えていかないといけないですね」

 ――解説の役割も大きい。
 「自分はあまり解説(の仕事を)しないんですけど(笑い)」

 ――2020年を振り返る一環で、タイトル戦で注文した「勝負メシ」の写真を見ていただきます。
 「あっ。うふふふふ(なぜか大受け)」

 ――百人一首のように、いついつの対局…と読み上げますので、当てはまる写真を選んでください。まず2冠目を獲得した王位戦第4局第2日(8月20日)の勝負メシは?
 「(間髪入れず)これですね」

 ――福岡産高菜ピラフ。正解です。では棋聖戦第3局(7月9日)は?
 「(瞬時に)はい、これ」

 ――冷豚しゃぶサラダ定食。これも正解!次、棋聖戦第2局(6月28日)?
 「(即答で)これです」

 ――海老(えび)天重。またまた正解です。ではこれが最後の問題。王位戦第3局第2日(8月5日)は?
 「(迷わず写真を指さし)これで」

 ――惜しい。これは第1日の食事です。第2日はビーフステーキカレーセットランチでしたが。
 「(顔色がさっと変わり)ええっ?それは第2局だと思いますけど?」

 ――あっ(確認後)その通りでした!こちらの間違いです。肉うどん膳ですね。正解!すみません。
 「うふふふふふ」

 ――さすがの記憶力です。これまで注文したメニューは、ほぼ覚えているのですか?
 「はい。タイトル戦は、なぜか(笑い)」

 ――では普段の対局で注文する将棋会館での食事は?
 「それは、さっぱり分からないです(大笑い)」

 ――さて、次からは多少将棋以外の件も含めうかがいます。高校は今年3月で卒業。4月以降も自宅のある愛知県瀬戸市を本拠として活動したいとのことでしたが。
 「はい。そのつもりでいます」

 ――棋士専念になるということで、ある程度ライフスタイルが変わるのでは?
 「どうでしょう?当然、生活のリズムは変わってくることになるのでリズムを多分自分でつくらなければいけないと思うので、そこをなんとか自分にとっていいリズムでやっていけたらと思います」

 ――昨年7月に18歳となり、選挙も行きたいとのこと。選挙権を得て以来、瀬戸市での選挙はなかったようで。
 「はい。まだです」

 ――可能性としては今秋の衆議院選挙となりそうですが。
 「あれ?今年でしたっけ?」

 ――解散があると、もう少し早くなる。
 「あっ、そうですね」

 ――投票に行くイメージは?
 「うーん、現状で特には…(苦笑)」

 ――昨年7月のインタビューで、東海道新幹線の新型車両・N700Sに乗りたいと言ってましたが、実現は?
 「(身を乗り出しながら)いやあ、これが特に、普段から乗っていればそのうちチャンスが来ることもあろうかと思っていたんですが、現状は引けてないんです(苦笑い)」

 ――毎回、ワクワク期待しながら駅に向かっている?
 「確率的には1割弱かなと思うんですが、なかなか引かないですね。(ホームの)反対側で見たことはあるんですが」

 ――2021年といえば東京五輪・パラリンピック。楽しみにしている競技はありますか?なんだか去年も聞いたかもしれませんが。
 「そうですね、うーん。開催されるかというのがある意味最大の関心事ですか…選手の方にとっては大変な状況なのかなとは思います」

 ――ちなみに藤井2冠、地元瀬戸市での聖火ランナーの権利はまだ保持しています。
 「まあでも…(苦笑いしながら)練習しないといけないですかねえ」

 ――昨年も同じようなことを言っていた気がします。
 「あっ、結局練習しないまま終わったんですね(大笑い)」

 ――趣味の自作PCについて。昨秋発売されたZEN3採用CPUは購入されたんでしょうか?
 「してない…んです。ソフトに関してはZEN2最適版の“探索部”というのができて(処理速度が)1割くらい上がるので、それで粘ろうかと(笑い)思っています」

 ――最後の質問です。2021年末に、自分はこうなっていたい!というものがあれば教えてください。
 「はい。2021年は、それまで以上にタイトル戦や大きな舞台での対局を増やしたいと言う思いはあります。そのためには、なんというか当然実力が必要なので、実力をつけた上でそういった舞台を経験できる一年にしたいなと思います」

 ――タイトル戦中心に。
 「そうですね」

 ――王将戦も、また挑戦者決定リーグに戻ってくるのをお待ちしています。
 「はいっ。ありがとうございます」

 【取材後記】取材会場に入室直後の第一声は「あっ!今度はこんな感じなんですね~(笑い)」だった。
 ん?過去の取材(対局後も含む)ではオフレコ系のコメントはほとんどなく、淡々とインタビューに応じていた印象が強い。人気者の宿命だろうか。今回は本紙カメラマンが苦心して設置した正月用のセットを感心したように眺め、喜々としている。取材中のリラックスぶりも際立っていた。
 おそらく藤井自身はスポニチの取材に対し、王将戦恒例の「勝者の記念写真」をイメージしていたに違いない。07年の第56期第6局で佐藤康光棋聖(当時)が静岡県の海岸で将棋盤に向かった、伝説の「浜将棋」を撮影した吉田剛カメラマンの注文に応じて表情をつくる様子は、実に堂々としていた。
 四段昇段を決めた16年9月の記者会見では蚊の鳴くような声だったが…。4年間の成長ぶりに改めて驚いている。(我満 晴朗)

 〇…現在2冠で八段の藤井にとって次のタイトル戦は防衛を期す棋聖戦(例年6月開幕)。7月には王位戦の防衛戦も控えており、どちらかで連覇を果たせばタイトル通算3期で棋界最高段位の九段となる。過去の最年少九段昇段記録は渡辺明王将の21歳7カ月。7月下旬開幕予定の叡王戦5番勝負を含め、王座戦や竜王戦出場の場合は3冠の可能性もある。こちらの史上最年少記録は羽生善治九段の22歳3カ月。7月19日に19歳となる藤井には記録大幅更新の期待がかかる。

 ◆藤井 聡太(ふじい・そうた)2002年(平14)7月19日生まれ、愛知県瀬戸市出身の18歳。5歳で将棋を始め、10歳で関西奨励会入会。四段昇段(プロ入り)は史上最年少の14歳2カ月。デビュー以降29連勝は史上初。15歳で五、六、七段と連続昇段。18、19年と朝日杯連覇。タイトル戦初出場だった20年6~7月の棋聖戦5番勝負で渡辺明棋聖(当時)を3勝1敗で下し、17歳11カ月で史上最年少戴冠。7~8月には王位戦7番勝負で木村一基王位(当時)を4連勝で下し、18歳1カ月の史上最年少2冠に。名古屋大教育学部付属高3年在学中。師匠は杉本昌隆八段。
 

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