今、胸にしみるクイーンの曲は「心の絆」

[ 2020年5月6日 12:00 ]

英国で発売されたシングル「心の絆/Friends Will Be Friends」のジャケット
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 【牧 元一の孤人焦点】自宅で過ごす時間が長くなり、音楽を聞く時間も長くなった。ビートルズやオフコースなど好きなバンドの曲を聞く機会が多いが、クイーンを聞こうと思った時、ふと考えた。今、こんな時に聞くと胸にしみるクイーンの曲は何だろう?

 クイーン研究家・石角隆行氏に聞いてみることにした。石角氏は昨秋、クイーンの公式録音192曲について徹底解説した著書「クイーン全曲ガイド」を出版しており、良い答えを導き出してくれるに違いない。

 その答えは「心の絆」。正直、曲名を聞いてもメロディーが浮かばなかった。石角氏は「いわゆるヒット曲ではないので、認知度は低いかと思うが、まさに今の時代に必要なものは何かを示唆している曲で、勇気を与えてくれる曲だと思う」と話した。

 YouTubeにクイーンの公式チャンネルがある。そこで「心の絆」を聞いてみると、実は知っている曲だった。以前はアナログ盤で持っていて今はどこかに行ってしまったアルバム「カインド・オブ・マジック」(1986年発売)に収録されていたのだ。すっかり忘れていたが、この曲は英国ではシングル発売もされていた。

 石角氏が着目したのは、その歌詞と現状との類似性だ。「心の絆」は前半部分で、世の中の経済的不安定さ、家庭の混乱と困窮、医療危機などを描いていて、今の社会情勢をほうふつさせる。その上で、歌詞は「たやすいことじゃないね でも、きみには頼りになる友だちがいる 友だちはいつでも友だちさ」と訴える。

 石角氏は「この閉塞(へいそく)した状況も、友だちとの絆があれば打破できると訴える曲。友だちは、広義で家族ととらえてもいいと思う」と説明した。なるほど、極めて厳しい情勢の今は、友人、家族の大切さを再認識する時である。

 「心の絆」はミディアムテンポのバラードナンバーだ。聴衆一人一人に語りかけるように歌うフレディ・マーキュリーの声が胸の奥深くまで届く。ブライアン・メイの情緒的なギターソロが温かく心を癒やす。考えてみれば今回のコラムも、石角氏の友情に支えられて書くことができるのだと、絆を実感しながら聞いた。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在はNHKなど放送局を担当。

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