ドラマ「M 愛すべき人がいて」 怖すぎる田中みな実が面白すぎる

[ 2020年5月1日 11:25 ]

テレビ朝日のドラマ「M 愛すべき人がいて」で姫野礼香を演じる田中みな実(C)テレビ朝日
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 【牧 元一の孤人焦点】この人はもともとアナウンサーより女優に近い人なのかもしれない。とにかく、目が怖い。何かが憑依(ひょうい)したのかと思うほどだ。テレビ朝日のドラマ「M 愛すべき人がいて」(毎週土曜後11・15)の田中みな実が面白すぎる。

 この作品は、歌手の浜崎あゆみの自伝的小説「M 愛すべき人がいて」(小松成美著)にドラマならではの彩りを加えたラブストーリー。テレビ朝日のドラマ「奪い愛、冬」(2017年)、AbemaTVのドラマ「奪い愛、夏」(19年)の壮絶なバトルや強烈なセリフ、スピーディーな展開で話題を呼んだ鈴木おさむ氏が脚本を手掛けている。

 主演は、歌手・アユ役の安斉かれんとプロデューサー・マサ役の三浦翔平の2人で、田中はマサの秘書・姫野礼香役を演じている。この礼香の設定が異様だ。テレビ朝日の資料によれば「決して右目の眼帯を外さない謎めいた美女。長年、マサに思いを寄せており、マサがアユに肩入れするのが許せず、激しく嫉妬。姑息(こそく)な手段でアユへの嫌がらせを繰り返す」。

 田中は「こんなに意地悪な役は初めて。セリフは普通に生活していたらまず口にしないようなことばかりですし…」と話しつつ、「新たな自分を発見できたら面白いなと思っています」と意欲を示す。

 それにしても、4月25日放送の第2話で、礼香がマサの気持ちを問いただす場面がすごかった。礼香はソファに座るマサのヒザの上に乗って両脚を投げ出しながら「商品(アユ)に手を出すなんて最低だもんねえ!」と怒声。近くにあったブドウをマサの唇にグリグリと押しつけた後、そのブドウをパクリと食べてしまうが、その時の左目の怖さが尋常ではなかった。よくぞあそこまで狂気を表現できたと思う。

 田中はこのドラマの演技プランについて「クランクイン当日、三浦翔平さんとの雑談の中で『(脚本が)鈴木おさむさんだし、その世界観の中で思いっきりやっちゃって良さそうですよね』と言っていただいた」と説明。つまり、鈴木氏の作品だから、思い切った芝居をやっているということ。田中は昨年、鈴木氏の脚本のドラマ「奪い愛、夏」に出演し、共演した水野美紀らの強烈な芝居を目の当たりにしており、その世界観をよく理解していたようだ。

 しかし、そうだとしても、あそこまで振り切った芝居をするのは並大抵ではない。アナウンサー出身で演技の上手な人も存在する。しかし、田中には、上手、下手という区分けとは別に、作品に向かう覚悟の強さ、人並み外れた潔さ、器の大きさを感じる。最近は写真集が大ヒットして話題になったが、役者としての将来も楽しみな逸材だ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在はNHKなど放送局を担当。

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