12日開幕 令和初の「王将戦」 初登場・広瀬八段の挑戦受ける渡辺王将「去年と違うことを実感」

[ 2020年1月12日 05:30 ]

茶のみやきんじろうと掛川茶PRレディ・松葉理紗さん(右)が見守る中、掛川城を背に刀を交える徳川家康に扮した渡辺王将(右から2人目)と山内一豊に扮した挑戦者の広瀬八段(撮影・久冨木 修) 
Photo By スポニチ

 将棋の第69期大阪王将杯王将戦7番勝負(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)は12日、静岡県掛川市の掛川城二の丸茶室で第1局が開幕する。11日は連覇を目指す渡辺明王将(35)=棋王、棋聖との3冠=、初登場となる挑戦者・広瀬章人八段(32)ともに現地入りし、対局場を検分。3カ月に及ぶ長丁場に向けて気持ちを高めていた。

 松の内の残り香漂う二の丸茶室。検分で5年ぶりに掛け軸を背にした渡辺王将は「(挑戦者だった)昨年と場所が変わって新鮮ですね。久々に上座に座る。去年と違うことを実感しています」と万感の思いを明かした。

 昨期、久保利明王将(当時)を4勝無敗で下して以降、今期も勝率8割を超える好調を維持。加えてタイトル防衛を期す今回の相手・広瀬とはこの1年間で6勝1敗と圧倒している。昨年11月のJT杯決勝以降、つい2日前の叡王戦を含め2カ月間で3連勝。番勝負を前にこの実績は大きなアドバンテージといえる。

 だが渡辺に慢心はない。「持ち時間が全然違う。今回、広瀬さんとは初めての2日制ですから」と慎重だ。JT杯は、いわゆる早指し戦。昨年12月25日の順位戦でも各6時間だ。封じ手を挟んで2日に及ぶ各8時間持ちの王将戦と単純に比較できない。だからこそ「時間の使い方など、まず1局目でペース配分をつかみたい。相手に合わせることもあるし、明日(12日)どんな具合で進むのかを考えています」と、まずは腹の探り合いを期した。

 そのコンセプトは広瀬も共有している。直近の連敗について「持ち時間により戦略を組まれて負かされた」と分析した上で「その戦略に注意しながら(対局を)進めるのが自分自身のテーマです」と話す。かつて「振り穴(振り飛車穴熊)王子」と呼ばれるほど一世を風靡(ふうび)した得意技を捨て、オーソドックスな居飛車党に変身。つまり将棋の指向は渡辺と完全にダブる。過去とは違う自分を主張するには絶好の2日制だ。

 王将戦に加え、2月からは棋王防衛の5番勝負も掛け持ちする渡辺だが「何度も経験しているので体調面では全く心配していません」と事もなげに言う。対する広瀬は昨年末に竜王位を失い、その後も棋戦敗退が続くなどやや不調ではあるものの「その分、王将戦に集中できるとポジティブに考えています」と、あくまでにこやかだ。

 令和初の王将戦開局は午前9時。先後手は振り駒によって決まる。

 ◆渡辺 明(わたなべ・あきら)1984年(昭59)4月23日生まれ、東京都出身の35歳。2000年に四段昇段を果たし、史上4人目の中学生棋士に。04年に竜王の初タイトルを獲得以降、王将戦3期を含む23期の戴冠を誇る。現在は王将のほか棋王、棋聖も保持している。

 ◆広瀬 章人(ひろせ・あきひと)1987年(昭62)1月18日生まれ、東京都出身の32歳。2005年に四段昇段、09年に新人戦で棋戦初優勝。10年の王位戦でタイトル戦初出場、初獲得。以降、昨期の竜王を含めタイトルは2期。早大教育学部理学科数学専修卒の「理系男子」。

 《前夜祭に190人出席》 午後6時半からJR掛川駅前の「掛川グランドホテル」で行われた前夜祭には、ファンや毎日新聞社の朝比奈豊会長、スポーツニッポン新聞社の河野俊史社長ら約190人が出席した。あいさつに立った日本将棋連盟の佐藤康光会長は「両対局者は切れ味鋭く、大局観が優れているという共通点があり、楽しみな7番勝負になる」と話した。前夜祭では大阪王将のキッチンカーで調理された焼きたてのギョーザ100人前が振る舞われた。

続きを表示

この記事のフォト

2020年1月12日のニュース