中村橋之助 現代劇初主演「あり得ない 周りにそういう人はいなかった」

[ 2018年6月9日 05:00 ]

舞台「オイディプスREXXX」で現代劇初主演する歌舞伎俳優の中村橋之助と共演の南果歩
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 歌舞伎俳優の中村橋之助(22)が舞台「オイディプスREXXX」(12月12〜24日、神奈川芸術劇場)で現代劇初主演を務める。中村芝翫(52)を父に、女優三田寛子(52)を母に持つ橋之助は、歌舞伎以外の演劇は意外にも今作が初めて。共演は約2年ぶりの舞台出演となる南果歩(54)と実力派・宮崎吐夢(47)という豪華布陣だ。

 歌舞伎界の次代を担うプリンスが演じるのは、実の母とは知らずに妻にめとり、子をもうける「オイディプス王」。破滅への道を描いたギリシャ悲劇の傑作だ。「元々、歌舞伎以外の演劇にも凄く興味があった」という橋之助。数奇な物語に「あり得ないですよね。僕が22年間生きてきた中で、周りにそういう人はいなかった」と苦笑いした。

 母で妻役の南と、このほど初対面。「緊張していた僕に気さくに話しかけてくれました。生意気ですけど、臆せずやろうかなと。そう思わせてくれた南さんの優しさに感謝です」と語った。南も「みずみずしくも頼りがいがある橋之助さんとご一緒できるのが楽しみです」と期待した。

 父の芝翫は基本的に放任主義だというが、今回は「大きな舞台で凄く勉強になるから出た方がいい」と助言された。「ここまで背中を押されたのは初めて」と橋之助。母の三田にも「“(重圧を)楽しんで糧にできるように”と言われました。普段からアドバイスは母からの方が多いですね」と感謝した。

 父や叔父の中村勘三郎さんらが歌舞伎以外の舞台に挑戦する姿を見て育った。橋之助はそれを「引き出し」と表現。父や叔父の引き出しの多さに憧れる。「歌舞伎でも演劇でも面白い役者でありたい。そして今回得た新しい引き出しを歌舞伎の世界でも生かせたら」と意気込んだ。

 ◇オイディプス王 古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人ソポクレスが、紀元前427年頃に書いた戯曲。王の子として生まれながら捨てられたオイディプスは、父を父と知らぬまま殺害。母イオカステと結婚する。真実を知った母は自害。オイディプスは自ら目をつぶし、王位を退く。

 ◆中村 橋之助(なかむら・はしのすけ)本名中村国生。1995年(平7)12月26日生まれ、東京都出身の22歳。屋号は成駒屋。00年9月、歌舞伎座「京鹿子娘道成寺」で初舞台。16年10月、父・芝翫、橋之助、弟の福之助、歌之助で父子4人同時襲名。今月22〜24日には「未来座 裁(SAI)カルメン2018」で創作舞踊にも初挑戦。

 橋之助に聞く

 ――今回の話をもらったときの率直な感想は?

 ずっと前から父やマネジャーさんには歌舞伎以外の舞台にも出てみたいと言っていました。生まれた時から歌舞伎の家にいますから、稽古場に行けば全員が私を知ってくださっている状況。父親の息子として扱ってくれるという状況でしかお芝居をしたことがなかった。歌舞伎以外の舞台に出ている先輩方は、普通の歌舞伎役者が持ってる以上の“引き出し”を持っているのを見てきました。だから「オイディプス」の話を聞いて、率直にうれしいと思いました。

 ――「オイディプス王」であるというのは大きい?

 大きいですね。僕は大学で比較芸術学科というところなので、「オイディプス王」の話も授業で聞いていましたから。いいセリフがたくさんありますし、お芝居のしどころもすごくたくさんある。

 ――歌舞伎との違いは?

 時代を超えて理解をしてもらえてきたのが歌舞伎。逆に「オイディプス」は今の人の感性に合わせてつくる現代劇。だから「今」の感覚は歌舞伎以上に大事にしなければいけないのかなと思います。

 ――今回は主演という立場。

 歌舞伎でも主役は何度かやらせていただきましたが、歌舞伎の場合は昼夜3つくらい演目があって、そのうちの1つで主役をやらせていただくという形。今回はこれ1つを見に来てくださっているわけですから、お客様に対する責任というには今まで感じたことがないようなものがあるのではないのかなと思います。

 ――共演は舞台演劇では大先輩にあたる南果歩さん。今回が初対面?印象は?

 初めてお会いしました。ごあいさつしたのですが、僕ビビってて(笑)。僕みたいな若造とやるのは…みたいのだったらどうしようと思って。そうしたら“橋之助君は12月まで歌舞伎に出てるんでしょ?オイディプスやるまでの間に一度見に行きたいから出てる公演教えて”と言ってくださって。生意気ですけど臆せずやろうかなと思えました。そう思わせてくれた南さんの優しさに感謝したいです。

 ――南さんのどんなところを学びたい?

 空気や舞台の雰囲気は歌舞伎とまた全く違うと思いますし、女優の方とがっつり組ませていただいてセリフのあるお芝居というのは初めてなので、そういったところをまず学びたい。それから客席の雰囲気というのも全く違うでしょうから、いろいろ吸収したいですね。やっていくうちに学ぶべき事が出てくるのも楽しみです。セリフがなにをいっているのか正確には分からなくても、そのリズムだけで心地いいというのが歌舞伎。演劇の場合はセリフの意味をきちんと伝えて、耳にも良くて、お芝居のリズムを崩さないというのは大事だと思います。今回そこを吸収して歌舞伎に持って帰りたい。

 ――橋之助を襲名して約1年半。襲名披露興行を通じて自分自身、変わったなと思う部分は?

 今まで憧れだったお役をたくさんやらせていただいて、興行しながら次の(興行の)セリフを覚えるというように時間に追われる中で、自分のやり方、タイミング、役に対する向き合い方というのが少し分かってきました。自分の間が持てるようになってきた気がします。

 ――この1年半は大きな経験になった?

 なりましたね。襲名披露興行が終わってからもまた橋之助を見たい、と思ってもらえるようにしないといけないなというのは一番持っていた意識。毎日大変だったけど、充実感はありました。

 ――芝翫さんは橋之助さん時代が長かったので今も「橋之助」と呼ばれると反応してしまうと言っていたが?

 ――僕もまだ「国生」で振り向きますよ。橋之助でもちゃんと振り向けるようにはなってきましたけど。今まで「坊ちゃん」と呼ばれていたのが、いろいろな方が「若旦那」と呼んでくださるようになったんですけど、「若旦那」はなかなか慣れないですね(笑)。

 ――芝翫さんは歌舞伎以外の舞台に挑戦することをどのように言っている?

 父は基本的に放任主義なんですけど、今回は珍しく「こんな機会めったにないし、大きな舞台で凄く勉強になるから、出ておいた方がいい」と言われました。そこまで背中を押されたのは初めてかもしれません。

 ――母の三田寛子さんから助言は?

 今回は歌舞伎を離れてお手本もない中、初めて一人で戦う経験になるだろうから、心して臨まなければならないし、逆にそれを楽しんで糧にできるようにもしなければならない、と。先輩としてのアドバイスは父からよりも母からの方が多いかもしれません。私は先輩にこういう風に言われたから、あなたもやってみたら、とか。

 ――兄弟ですごくお母様を大切にしている。

 僕らが小さかった頃、父が一番忙しかったんです。母が父親みたいに公園で野球してくれたり、プール連れてってくれたり。そういう意味でも兄弟3人、凄く母に感謝しています。

 ――今回の舞台でお母様に新たな一面を見せたい?

 でも母は凄くうるさいと思いますよ。

 ――今後どういった役者になっていきたい?

kお客様が観劇後、感想を語り合うためにご飯を食べに行きたくなるような、そんな役者になりたいと思っています。「オイディプスREXXX」を見て、橋之助のここが良かった、いやあっちの方が良かったということを語り合うために、ちょっとご飯でも食べてから帰ろうよ、と思ってもらえるような役者になりたい。

 僕の夢は兄弟3人で歌舞伎座のチラシに一番大きな写真で載って、それぞれが主役をやってそれぞれの芝居にみんなが出ることです。そのためには仲がいいだけではダメで、お尻を叩き合える関係でなければならない。今回初めて歌舞伎以外の演劇で、一人で新しい引き出しをつくって、でも最終的には歌舞伎に帰って兄弟3人で経験を共有したいと思っています。

 ▼南果歩の話 「オイディプス王」は、学生時代に出会った戯曲です。久しぶりの再会で、原点に立ち返るような感慨があります。当時はオイディプスに自分を重ねていましたが、先日、恩師に「お前もイオカステをやるような年になったか」と言われてしまいました(笑)。(演出の)杉原さんは独特な感性の若手演出家。音楽やビジュアルも含め、従来のギリシャ悲劇のイメージを覆してくれるのではと期待しています。みずみずしくも頼りがいがある橋之助さんともご一緒できるのが楽しみです。

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