中村七之助 全身傷の色男 珍しい立役で新境地

[ 2018年4月14日 05:30 ]

コクーン歌舞伎「切られの与三」製作発表会見に臨む中村七之助(中央右)と中村梅枝(同左)。右は演出の串田和美氏、左は補綴(ほてつ)の木ノ下裕一氏
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 歌舞伎俳優の中村七之助(34)が13日、都内で行われた渋谷・コクーン歌舞伎第16弾「切られの与三」(5月9〜31日、Bunkamuraシアターコクーン)の製作発表会見に出席。2012年に他界した父・中村勘三郎さんが立ち上げた舞台で、魂を受け継いでいくことを改めて誓った。

 一目ぼれしたヤクザの親分の愛人(お富)に手を出し、体中に切り傷を負わされる色男の与三郎役。数奇な出会いを繰り返す男女の生きざまを演じる。普段は約9割が女形という七之助は珍しい立役に、「不慣れではありますが、私なりに良いものにできたら」と意気込みを語った。役が決まった際には「真っ先に(松本)幸四郎さんと(片岡)愛之助さんが楽屋にやってきて、傷はこうやって描くんだよと、聞いてもいないのに教えてくれた」と感謝した。

 コクーン歌舞伎は94年に勘三郎さん(当時勘九郎)が始めた。古典歌舞伎を新しい解釈や現代の音楽で演出するのが特徴で、勘三郎さんが大切に育ててきた舞台。七之助にとっては「父が残してくれた宝物の一つ」だ。今公演では当時を知る役者は誰もいない。だが「(父が)立ち上げたときの“熱量”は今も肌で感じる。染みついた魂は変わらない」と力を込めた。

 「切られの与三」は勘三郎さんもコクーン歌舞伎では演じなかった新作となる。9幕18場からなる長い芝居のため普段は全幕上演されることはないが、今回はすべての場面を洗い出し再構築する予定だ。父が残した新たな伝統の中で、七之助が新境地に挑む。

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2018年4月14日のニュース