「半分、青い。」佐藤健 初の朝ドラ「相容れるか」不安も北川脚本に心酔 職人気質で新境地へ

[ 2018年4月15日 00:00 ]

連続テレビ小説「半分、青い。」でヒロインの運命の幼なじみ・律を演じる佐藤健。16日放送の第13話から本格的に登場する(C)NHK
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 俳優の佐藤健(29)がNHK連続テレビ小説「半分、青い。」(月〜土曜前8・00)で朝ドラ初出演。ヒロイン・楡野鈴愛(すずめ)を何かと支える、彼女と同日生まれの運命の幼なじみ・萩尾律(りつ)を演じる。物語は16日放送の第13話から高校時代がスタートし、佐藤も本格的に登場。近年は映画出演が多く「さわやかな朝の15分を毎日担っている、テレビドラマを代表するドラマというイメージの朝ドラと相容れるのだろうか」と不安だったが「いざやってみると、距離感が近くなった気がします」と心境の変化を明かし、手応えを示した。脚本の北川悦吏子氏(56)が「自分が書いてきたラブストーリーの相手役として集大成になるんじゃないかなと思っています」と語るキーマン。インタビュー中も浮ついたところがなく、職人気質がひしひしと伝わった。きっと鈴愛の頼もしい味方になるに違いない。(木俣 冬)

 永野芽郁(18)がヒロインを務める朝ドラ98作目。フジテレビ「素顔のままで」「ロングバケーション」「空から降る一億の星」やTBS「愛していると言ってくれ」「ビューティフルライフ」「オレンジデイズ」など数々の名作を生み“ラブストーリーの神様”と呼ばれるヒットメーカー・北川氏のオリジナル脚本。岐阜県と東京を舞台に、病気で左耳を失聴した楡野鈴愛(永野)が高度経済成長期の終わりから現代を七転び八起きで駆け抜け、一大発明を成し遂げる姿を描く。

 佐藤は大ヒットした主演映画「るろうに剣心」シリーズ(2012年〜)で激しいアクションもこなし、TBS日曜劇場「天皇の料理番」(15年)では実直な料理人を熱演。日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(17年)では重病のヒロイン(土屋太鳳)が回復するまで8年支え続けるというひたむきな青年を好演。20日公開の映画「いぬやしき」では初の悪役に挑んでいる。

 これまで、その印象的な大きい瞳で、舞台となる時代や社会、関わる人たちの生きる姿をしっかりと見据え、考えながら行動する役柄が多かった。引き続き「半分、青い。」も主人公を支え見つめる役ではあるが、これまでとちょっと違うのは、佐藤いわく「律は周りに作られているキャラクターであるということ」。

 「“律って、こうだよね”と彼の周囲の人が語ることで、彼の人物像が出来上がっていくように感じています。このドラマはあくまでも鈴愛のドラマで、律は鈴愛にとってどう見えているかが一番大事かなと思います。そういう役を今まで演じたことがなくて、鈴愛にとって、みんなにとって、魅力的な人物であるように演じたいと思います」と新境地への抱負を語った。

 律は裕福な家のお坊ちゃんで、理系で頭が良く、鈴愛が笛を吹くと現れて助けてくれる、いわゆる少女漫画の憧れの男の子みたいに描かれている。そういう素敵なイメージを形作らないとならない。

 「律は自分っぽいと感じていて、自然体で、自分の素が出てもいいのかなと思っています。北川さんは俳優に当て書きされる方で、役者の実態がつかめないと書けないほどらしいんです。でも、お会いする前から、僕に近い役を書いてくださっていました。もともと、純粋に北川ドラマを好きで見ていて、いつか出たいと思っていて。実際、脚本を読むと、こういう画になると分かって脚本を書いていて、こういうふうにドラマを作りたいという強い意思が伝わってくる。ドラマを作る本質って、こういうことなんだと感じました。あと、台詞がとてもおもしろく、それがキャラクターや作品の魅力に通じていると思います。内容も面白く、先が楽しみになる脚本ですね」

 とにかく鈴愛が魅力的で、みんなが鈴愛を好きになると思うと言う佐藤。そんな鈴愛と律の関係をどう考えているかというと――。

 「恋愛するタイミングを逃してしまった2人であって、お互い、好きなんだろうけれど、あまりにも小さい時から一緒にいて、好きなことに気付けなかった。オトナになって離れてから気づくような関係で、僕としては、鈴愛に対して、すごく仲の良い人と好きな人との中間くらいの気持ちで演じています。律としては、肌の接触がないように、距離感に気をつけているようにしていて。そう考えるってことは、やっぱり律は鈴愛を意識しているのかなと思う」と、なかなか鋭い解釈をした。

 今後、高校を卒業して東京編になると、もう1人の女性・伊藤清(サヤ:古畑星夏)が登場。

 「鈴愛と律、清と律は、それぞれ違う関係性になるので、そこが東京編の最大の見どころになるんじゃないでしょうか。めちゃめちゃ面白くなると思います。シリアスなんだけれど、そう来たか、と笑っちゃうところもあって」

 大河ドラマは「龍馬伝」(10年)で経験があるが、朝ドラは初出演。 「やる前は、自分が今までやってきた作品とは違うように感じていました。たまたまとはいえ映画の仕事を多くやってきた僕が、さわやかな朝の15分を毎日担っている、テレビドラマを代表するドラマというイメージの朝ドラと相容れるのだろうかと思っていたのですが、いざやってみると、距離感が近くなった気がします」

 ただ撮影は大変。「なんといってもセットに1日いるのが大変。撮る量が多くて、先の分まですごくたくさん撮る。夜12時くらいまで撮って、朝からまた撮影という、この繰り返しなので、夜になると、かなり疲労してしまう。僕がそうなのだから、出ずっぱりの永野さんはもっと大変だと思います」

 とにかく目ヂカラがハンパなく、撮影の合間で行ったインタビューに、フィールドコートをはおってペットボトルの水を持ち、ふらっと現れた瞬間から、凄みがあった。決してコワイわけではなく、何でも見透かされそうな感じがするのだ。口角もキュッと上がった美形であると同時に、とてもクレバーな雰囲気。浮ついたところのない、職人的な意識で芝居に関わっている印象で、この人ならきっと鈴愛の頼もしい味方になってくれると確信した。

 ◆木俣 冬(きまた・ふゆ)東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンターテインメント作品のルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。「マルモのおきて」「デート〜恋とはどんなものかしら〜」「隣の家族は青く見える」などドラマのノベライズも手掛けている。主な著書に「ケイゾク、SPEC、カイドク」「SPEC全記録集」「挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ」など。レビューサイト「エキレビ!」にNHK連続テレビ小説(朝ドラ)評を執筆。2015年前期の「まれ」からは毎日レビューを連載している。昨年5月に近年の朝ドラ復活や過去の名作を考察した「みんなの朝ドラ」(講談社現代新書)を上梓。画期的な朝ドラ本と好評を博している。

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2018年4月14日のニュース