渡瀬さん 最期まで役者魂…病室に新ドラマ「9係」台本

[ 2017年3月17日 05:30 ]

死去した渡瀬恒彦さん
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 俳優渡瀬恒彦さんが14日に72歳で他界したことを16日付のスポニチ本紙が伝えたことを受け、所属事務所が同日、死因が多臓器不全だったことを公表した。病室に台本を持ち込み、仕事復帰に意欲を燃やしていたが、肺気胸に敗血症を併発した。兄で俳優の渡哲也(75)が直筆の文書で弟をしのんだのをはじめ、俳優仲間たちが追悼のコメントを寄せた。葬儀・告別式は17日、親族のみで営む。喪主は妻い保(いほ)さん。

 多くの俳優仲間から慕われた渡瀬さん。所属する東映が16日、報道各社にファクスで急逝を正式に報告した。2月中ごろ左肺に肺気胸を発症し入院治療を続けていたが、今月に入って敗血症を併発。14日に容体が急変し、夫人、長男、長女の家族3人にみとられながら静かに息を引き取ったという。

 遺体は15日に東京・世田谷区の自宅に無言の帰宅。明けて16日は朝から片桐竜次(69)や成瀬正孝(67)ら東映時代の俳優仲間たちが慌ただしく弔問に訪れた。

 自宅前で取材陣に対応した担当マネジャーの和田祐成氏は「13日に見舞った時には元気でした。“警視庁捜査一課9係”の撮影スケジュールの打ち合わせをしていたほどです」と説明し、亡くなる前日まで仕事に意欲を見せていたことを明かした。

 関係者によると、病室には「9係」の台本を持ち込んでいた。知人は「体調が良くなれば、いつでも撮影に向かおうと思って、読み込んでいたのでしょう」と振り返っている。

 渡瀬さんは15年夏ごろに体調不良を訴え、検査の結果、胆のうに悪性腫瘍が見つかって都内の大学病院に入院。抗がん剤の投与と放射線治療を受けながら仕事を続けてきた。この間に余命1年を宣告されていたが、周囲には「どうしたら治療しながら仕事ができるかなあ」と語り、医師に治療法を相談していた。

 昨年放送された“9係season11”の現場でも共演者に無用な心配はかけたくないとの思いから病名を伏せて撮影に臨んだ。撮影に参加した最後の作品で、事実上の遺作となったテレビ朝日系の2夜連続ドラマ「そして誰もいなくなった」(25、26日後9・00)の現場でも酸素吸入器のチューブを装着していたが、本番の時には取り外して毅然(きぜん)と現場に立った。文字通り、命を削った俳優人生だった。

 「次男だから渡瀬家の墓には入れない」と既に墓も自分で購入していたという。1月に他界した松方弘樹さん(享年74)に続き、昭和、平成を駆け抜けた名優がまた一人いなくなった。

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