「逃げ恥」原作者・海野つなみ氏が語る“ロス解消法” 続編の予定は

[ 2016年12月23日 08:56 ]

「逃げるは恥だが役に立つ」原作者・海野つなみ氏の自画像(C)海野つなみ/講談社
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 女優の新垣結衣(28)が主演を務め“ムズキュン”“恋ダンス”などのブームを巻き起こし、20日に最終回を迎えたTBS系ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。視聴率は初回の10・2%から回を重ねるごとに数字を挙げ、最終回には大台20・8%に到達した。ここまでの反響を、原作者の海野つなみ氏(46)はどのように感じているのか。「契約結婚」のアイデアの源、また、期待の声が挙がる続編の予定についても聞いた。

 最終回放送前から、今もなお「逃げ恥ロス」が蔓延するなど、社会現象にもなった同作品。ドラマは20日の放送で完結、2012年から始まった「Kiss」(講談社)での連載も24日発売の「2月号」でゴールを迎える。「ここまで大ヒットするとは予想できなかった」と海野氏。自身も連載での最終話を描きながら一足先に「ロス」を体感していたという。

 「みくりちゃんを描くのが最後かもしれないって思ったら“ああああ〜”ってなって。より一層丁寧に書こうって思いました(笑い)。ただこの3カ月間、大きな嵐の中に巻き込まれた感じで、この旅を振り返るのはこの先。そのときにまたロスが来るのかなと思います」

 派遣切りにあった主人公・森山みくり(新垣)が「独身のプロ」を自称する会社員・津崎平匡(星野源)と共同生活をし、労働としての家事に対して賃金をもらう「契約結婚」をするストーリー。そもそもこの契約結婚のアイデア、「恋愛ものの装置として、草食男子とうまくやっていくにはどうしたらいいのか」という妄想から生まれたという。

 「草食男子でも役割があれば動き出せるのかな、仕事だったらハグもできるかな…とか。思考実験というか、2人をこういうシチュエーションに置いたらその後どうなっていくんだろうって頭の中で観察していました。時々キャラクターが暴走して、こんなことしても大丈夫なの?ってことも。とにかく、自分が驚いたり、面白いと思った方を選んで話を進めていきました」

 その最たるものが、新婚旅行という名の社員旅行の帰りの電車の中、平匡が突然みくりにキスしたシーン。ファンが騒然となった場面だ。

 「実は私が一番びっくりした。(平匡は)そんなキャラじゃないし、これはダメだって思ったのですが、大胆な行動ができるような人ではないのにこの先どうするんだって。そこを知りたくて、ちょっと様子を見てみようと頭の中でシミュレーションを続けていった。先のことを見据えずに書くやり方をしたことがあまりなかったので不安もあったのですが、最後まで書き切れた。これは自分にとっても自信になりましたね」

 今作品が自身にとって最長の連載。コミックで読者を増やし、ドラマ化でさらにファン層が拡大した。結婚制度が抱えるさまざまな問題への考察や解決のヒントが盛り込まれたが、ここまで受け入れられた背景について「多様性というところで、今の時代と合ったのでは」と分析する。

 「10年前だったら、みくりの提案を“がめつい”といって、注目もされなかったと思います。結婚の形をこれだけ多面的に描き、いろんな角度から見るという作品があまりなかったので、みなさんにとっても考えることがたくさんあったのかもしれません。ただ、声高に新しい結婚の形を提示したいとか、私の結論がすべてとは思わない。今回は『恋愛もの』『お仕事もの』と見方もさまざまで、どちらも否定しないというか。結婚、働き方、生活のスタイル…人によって理想はいろいろ。作品の中で共感できる部分をヒントして、自分はこうやってみようとか、何かの手助けになっていたらうれしいですね」

 デビュー27年目。1年間まったく仕事がない期間が2度、病気休載もあったなど、ここまで順風満帆というわけではなかった。そんな中での、最長連載、漫画賞も受賞するなど、40歳を過ぎての大ブレークとなった。ファンの間では早くも続編を希望する声があふれているが、現在のところその予定はないという。

 「連載終了後に、番外編として(みくりのおばの)百合ちゃんが主人公の話を書くことになっていますが、書きたいことは本編であらかた書いてしまったので。自分が結婚していたり、子供がいれば、結婚生活や子育てで感じることを描くとか、あるいは取材をしたり、知らないからこそ書けるというのもありますが、今のところは(続編は)いいかなって思っています」

 ファンにとってはロスが続きそうだが…。

 「年末には(星野が出演、新垣が審査員の)紅白がありますし、連載最終話ではドラマとはちょっと違うテーストの部分もあるので、それも楽しんでもらえれば。ドラマもまた一から見直して萌え転がってほしい。初見とは違った観点で、恋愛ものだと思っていた人も今度は仕事ものとして見られるかもしれませんし、その逆もあります。そんな感じで“逃げ恥ロス”を乗り切っていただければ…」

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