見逃してください…

[ 2016年10月21日 07:30 ]

この時点で負けだった…
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】20年ほど前、生まれて初めて買ったパソコンはマッキントッシュの一体型デスクトップ、パフォーマだった。

 熱中したのがインストール済みのソフト「AI将棋」。なにしろ小学生時代にルールを覚え、高校時代は休み時間のたびに友人と熱く指していた口だ。腕に覚えは多少あるし、機械なんか相手に負けるはずはないと勝手に思い込んで対局したら、これが強いのなんのって。連戦連敗で歯が立たない。

 もう破れかぶれだ。頭にきたので自玉で相手に王手をかけてみた。取れるものなら取ってみろ!するとその瞬間、カラー画面が暗転し、例の爆弾マークが表示されたではないか。

 ソフトどころかパソコン自体がフリーズしてびくとも動かない。これって、もしかしてソフトの投了?つまりオレ様の勝利か?がはははは。

 以降、将棋好きの人に会うと鼻の穴を膨らませながら「オレってAIに勝ったんだぜ」と言いふらしていた時期がある。そのたびにスルーされるケースが多くて不思議だった。なんてことはない、単なる反則負けだったと知ったのは数年後のこと…。

 実は当時の将棋ソフト、プロにとっては噴飯物に近いほどの弱さだったらしい。それから20年以上を経過し、現在のソフトの実力はプロ棋士に並んだどころか、すでに上回っているというのが残念ながら実情だ。

 コンピューターと棋士が対戦する「電王戦」でプロが負け越しているという事実に加え、日本将棋連盟が10月5日に発表したいわゆる「スマホ禁止令」も、ソフトの優位を公に認めた「敗戦宣言」と受け取れる。

 その1週間後には竜王戦に出場する予定だった三浦弘之九段が年内出場停止となる衝撃ニュースが飛び込んできた。本人は否定しているものの、対局中にソフトを使用した疑惑があるという。その影響を受け、現在開催中の竜王戦では対局前に金属探知機で棋士を検査している。まるでテロ対策じゃないか。

 今後の将棋界はどうなるのだろう。最終的には「棋士たるもの、カンニング行為など絶対にしない」という性善説を捨て去るしかない。逆に「棋士であっても不正を行う可能性がある」という前提の下、より厳格な規則を設定する必要がある。日本の美徳を否定するようで心苦しいのだけど、よく考えてみれば入学試験や各種検定会場では受験者の性善説などハナから認めていないのだからね。

 おいおい偉そうなことを書きやがって…と、取材でお世話になった棋士の先生方に怒られそうな気がしてきた。何しろ20数年前のヘボ将棋ソフトにすら手も足も出なかったヘタレの意見なので。将棋好きの皆様、スルーしていただいて全く問題ありません。(専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

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