林遣都 初舞台からセンス発揮「セリフ前後の芝居がいい」倉持氏絶賛

[ 2016年9月13日 09:00 ]

初舞台「家族の基礎~大道寺家の人々~」に奮闘している林遣都(左は夏帆)(撮影:柴田和彦)

 デビュー作の映画「バッテリー」などで知られ、今年はピース・又吉直樹(36)の芥川賞受賞作を原作にしたインターネット配信ドラマ「火花」に主演した俳優の林遣都(25)が初舞台に奮闘している。一風変わった家族の歴史を描くコメディー「家族の基礎~大道寺家の人々~」(28日まで、東京・シアターコクーン)で、芸術家肌の長男役に挑戦。脚本・演出を手掛ける倉持裕氏(43)に、林の魅力を聞いた。

 倉持氏は2000年に劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」を旗揚げ。04年に「ワンマン・ ショー」で演劇界の芥川賞と呼ばれる第48回岸田國士戯曲賞に輝いた。三宅弘城(48)が主演を務める「鎌塚氏、放り投げる」「鎌塚氏、すくい上げる」「鎌塚氏、振り下ろす」の「鎌塚氏シリーズ」などコメディーに定評があり、NHK「LIFE!~人生に捧げるコント~」(木曜後10・25)のコントも執筆している。

 今作は、風変わりな一家・大道寺家の波乱万丈な運命、挫折と再生を描くコメディー。林が演じるのはナイーブで芸術家肌の長男・大道寺益人。紆余曲折を経て、劇場「大道寺シアター」を経営することになる弁護士の父親役に松重豊(53)元女優の母親役に鈴木京香(48)妹役に夏帆(25)。父の小学生時代、夫婦のなれそめから始まる一家の“大河ドラマ”で、大道寺家と関わる面々には堀井新太(24)黒川芽以(29)坪倉由幸(39)眞島秀和(39)六角精児(54)と実力派キャストが揃った。

 林について、倉持氏は「演劇的な見せ方を、まだ初舞台で知らないだけ」。稽古初日こそ「セリフの頭や語尾をハッキリ出さないと、観客に伝わらない。懇切丁寧にマイクが拾ってくれるわけじゃないから。舞台の場合、セリフの“アタック感”が重要。今回はコメディーなので、その声量じゃツッコミが効かない」などと“演劇的なダメ出し”はしたが、演じるキャラクターについては「彼の方が先に把握していましたね」と振り返る。以降は「どんどんダメ出しが少なくなって。咀嚼する能力が高いと思います」とベタ褒めした。

 さらに感心したのが「セリフで表現しようというんじゃなく、セリフを言った後とか、前とか、そういうところの重要性をちゃんと分かっている。セリフを言っていない時の芝居がとてもいいですね」。

 倉持氏が演技論を解説する。「セリフなんていうのは、究極的には言えばいいんです。なぜそのセリフを言うのかという前の時間とか、セリフを言い終わった後に生まれた感情とかが重要。役者の力量も、そこで試されると思います。台本に書いてあるセリフを覚えて言うなんて、大したバリエーションはないし、勝負のし甲斐がないんじゃないですかね。ですが、セリフを言い終わった後とか、どの状態でそのセリフに入っていくのかというのは、無限のバリエーションがあると思うんです」。そして、林について「セリフの前後が大事だということを分かっていて(セリフの前後の芝居が)できていると思います」と評価した。

 一例が劇中、林がある女性に告白する場面。女性に好意を抱く過程は細かく描かず「ほとんど一目惚れみたいな告白。強引なことをさせているとは思うんですが、そのシーンだけで、好きになって告白するまでの経緯が分かるような、ウソっぽくない演技をしています。しっかり自分の中で作っているんでしょうね」。林は初舞台ながらセンスを発揮している。

 製作の「M&Oplays」の大矢亜由美プロデューサーは「また見たことがない人を見たい。新鮮な方を舞台に上げたいという思いは常にあります」とキャスティングの狙いを説明。過去に夏川結衣(48)麻生久美子(38)二階堂ふみ(21)らの初舞台作品をプロデュースしている。林については「全然、心配していなかったです。ちゃんと相手との空気感をくみ取れる。その場にスーッと入っていける。最初からできていて、才能を感じます」と信頼を寄せている。

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