浅野ゆう子 アイドル時代は鳴かず飛ばず 取材の質問に「私って一体何なの?」

[ 2016年8月28日 11:45 ]

トレンディーブームから30年たった今でも美しく輝き続ける浅野ゆう子

 かつてトレンディードラマのヒロインで旋風を巻き起こした浅野ゆう子(56)。あのブームからすでに30年近く。時の流れは人気女優をオールマイティーの実力派に成長させた。そんな彼女に当時の気持ち、今の自分を聞いた。

 憧れのレストランにブランドファッション。しゃれた会話で繰り広げる都会のラブストーリー。フジテレビの「君の瞳をタイホする!」(88年)は、当時の若者に新たなライフスタイルを示した。ドラマは大ヒット、ポジティブなシングルマザーを演じたこの人は、一気に人気女優の仲間入りを果たした。

 「いきなりファッションリーダーみたいなことになってしまって。いい時代でしたね。ドラマがオンエアされた次の日、渋谷に行くと若い女性がみんな“浅野ゆう子”みたいなスタイルで歩いてました。でも、実生活は地味でした。ドラマとは全然違う。お酒が飲めませんから、コロナビールにライムを挟んだこともありません」

 華やかなドラマのイメージからか、スター街道を順調に歩んできたと思われがちだが、決してそうではない。アイドル歌手でデビューするが、鳴かず飛ばずの時代もあった。化粧品の水着CMで抜群のプロポーションも披露したが、それも長くは続かなかった。20代に入り自身の行く末に悩んだ。雑誌の取材を受けた際、「本業は何ですか」と聞かれた。

 「その時ですね。私って一体何なの?歌手、モデル、それとも女優?私がもし名刺を作ったら、そこには何と肩書を付ければいいのかしら。そう考えたら、やっぱり私は“女優 浅野ゆう子”がいいと思ったんです。これからは女優一本でいきたい。それをそのまま事務所に伝えました」

 幸いにも2時間ドラマのオファーは年に数回あった。そんな彼女の熱意が伝わったのか、ドラマを見た「北の国から」などを手掛けたフジテレビの山田良明プロデューサー(当時)から「一緒に仕事をしましょう」と声が掛かった。それが大きな転機となった「君の瞳…」。その後、浅野温子と“W浅野”と言われた「抱きしめたい!」へと続いた。

 大切な出会いもあった。「抱きしめたい!」でしゅうとめ役で共演した野際陽子だ。いつの間にか旅行や食事をする仲になり、今では何でも話せる人生の相談相手となった。こんなエピソードもある。10年ほど前のことだ。イタリアの野外劇場でオペラ「アイーダ」を一緒に観劇した際、浅野が仕事の疲れと時差で爆睡してしまった。終演後、野際に「もう終わったわよ」と起こされた。

 「野際さんが物凄く楽しみにしていたオペラだったので、失礼なことをしちゃったなと思ったんですけど、全然気にしてない様子でした。いつも穏やかで器が大きいというか。優しい人なんです。女優というより人間として心から尊敬しています」。今年1月、傘寿を迎えた野際が熱心に英語、フランス語を勉強する姿には、いつも頭が下がる思いという。

 マイブームは、フラメンコ。知り合いのスタイリストから「一緒にやってみませんか」と誘われ、昨年、始めたばかり。最初は適度な運動になればと気軽な気持ちでトライしたが、今では週1回、1時間半の個人レッスンを必ず受けるほどはまっている。

 「本当に奥が深いというか、激しい踊りもあればスローな曲もありますし。間合いとか手の運び方とか、どこか日本舞踊に通じるところがあるのかなと思います。まだ生のギターで踊ったことがないんですが、近い将来、皆さんに見ていただけるようにしたいです」

 読書家としても有名で司馬遼太郎、山本周五郎らの歴史小説から話題の新刊本まで時間が許す限り活字に親しんでいる。本好きが高じて、彼女の「これを演じてみたい」との申し出で、小池真理子さんの短編小説「間違った死に場所」(89年)がドラマになったこともあった。

 「読んだら物凄く面白かったんですよ。本はジャンルにこだわらず読みますが、テレビで育ててもらってますので、どうしても“これは映像にできるかな”みたいな読み方をしてますね」

 好景気だった80年代を象徴するドラマのヒロインもあれば、映画「藏」(原作宮尾登美子、95年)での重厚な演技もあった。時の流れに柔軟に対応できるのは、きっと浮き沈みの激しい世界を乗り越えてきた心の強さを持っているからだろう。

 「その時々に太陽のように輝いているトレンディーな俳優さんはきっといるはずなんです。これからは、そういう人たちと一緒に仕事ができる月のような存在になれればいい」

 9月11日からは歌舞伎の中村勘九郎主演の舞台「真田十勇士」(東京・新国立劇場)に淀殿役で出演する。

 ◆浅野 ゆう子(あさの・ゆうこ)1960年(昭35)7月9日、兵庫県神戸市出身。74年、アイドル歌手として「恋はダン・ダン」でデビュー。化粧品会社のCMで水着姿を披露し注目された。88年、フジテレビ「君の瞳をタイホする!」「抱きしめたい!」などに主演。浅野温子とともに“W浅野”と呼ばれた。映画「藏」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。

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