25年後の「東京ラブストーリー」 否定的な声も…愛されたことの証

[ 2016年2月4日 09:40 ]

「週刊ビッグコミックスピリッツ」最新号に掲載された「東京ラブストーリー」読み切りに登場した現在のカンチとリカ(C)柴門ふみ/小学館

 人気漫画「東京ラブストーリー」の25年後を描いた読み切り作品が、先週の週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)に掲載された。スポニチ本紙では、さらに本格的な続編が計画されているとの記事を掲載した。

 名作の復活は、大きな反響を呼んだ。歓迎の声ばかりではない。いや、ネット上では否定的な声の方が多いのではないかと思うほどだ。「ルックスの変化にがっくり」「オッサンになったカンチ、オバサンになったリカの恋愛なんて見たくない」などなど。

 だが反対の声の大きさは、作品がいかに愛されていたかの証明だ。当時の自分の若さ、青さを投影して拒絶することもある。大切な物語だからこそ、その後の展開を恐れもするだろう。

 作者の柴門ふみさんに、名作の続編を描く怖さはなかったのだろうか?答えはあっさりしたものだった。「特に考えなかった。昔の作品ですからね。編集部の依頼があったから描いてみた」。1990年の連載終了から四半世紀。その間、一度も読み返したことがなかったという。

 描き終えた感想を聞くと「相当、キャラクターが完成された物語だったんだなと驚きました」と答えた。

 懐かしさから、記者は単行本全4巻を読み返した。基本的には5人の若者の群像劇。カンチとリカの恋もややこしいが、カンチの幼なじみの医大生三上と、カンチが思いを寄せる女性さとみ、三上の同級生の長崎尚子も絡んでくるから複雑だ。

 5人の心は揺れ動く。いや、自分の本当の心になかなか気付けないからフラついてしまうと言った方がいいのだろうか。実際の人の心も、そんな不確かなものかもしれないと思った。

 3巻の巻末に掲載された柴門さんの言葉が気になった。「私は漫画を書く際、最終回までしっかりと考えてから、第1回を描き始める。東京ラブストーリーもそうだった」とのことだった。

 不確かで、揺れているように見えた5人の心は、柴門さんの緻密な設計図のもと動く「完成された物語」ということか。記者の知る、ある人気漫画家は「来週の話はこれから考える」と毎週揺れ動いている。漫画家それぞれのやり方がある。

 だが3巻には「一つだけ計算外があった」とも書いてあった。長崎尚子の存在だ。「当初の予定に全くない、ただの三上の同級生で、その他大勢のうちの1人のはずだった」。それが、三上とさとみの恋を終わらせ、カンチとリカの恋も終わらせることになる。三上に、映画「卒業」ばりの結婚式乱入をさせることになるとは…。柴門さんは「そういう思いがけないことが、作者にとっては一番面白いんです」と締めくくっている。

 今回の読み切り取材では「三上と長崎の話を描きたかったが、ページが足りなくて断念した」とも話した。25年前の“想定外キャラ”は、こだわりのなかったはずの作品の創作意欲を再び燃え上がらせるほど強烈だったのかもしれない。

 ちなみに3巻には「三上のような男性が一番好きなタイプ」だとも書いてあった。

 今回の読み切りは「恋愛でなく、人生の物語を描いた」と話した。まだ読んでいない人には、オッサンとオバサンが「青春よもう一度」と、ドロドロ恋愛に燃える話でないことだけは伝えたい。

 今後の物語の具体的な内容や掲載時期などは「検討中」というが、どんな東京ラブストーリーが始まるのか、今から楽しみだ。

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2016年2月4日のニュース