「天皇の料理番」代役なしの佐藤健 指導の西洋料理主席教授「間違いなく100点」

[ 2015年7月5日 09:00 ]

ドラマ「天皇の料理番」。主演の佐藤健(右)に調理指導を行う佐藤月彦氏(中)(C)TBS

 俳優・佐藤健(26)が主演を務める「TBSテレビ60周年特別企画 日曜劇場 天皇の料理番」(日曜後9・00)。大正・昭和時代の宮内省大膳頭を務めた秋山篤蔵氏の青年時代からの成長ストーリーはもちろんのこと、毎回話題に挙がるのが調理シーンで見せる佐藤のスゴ技だ。料理とは無縁だった佐藤を一から指導したのが服部栄養専門学校の西洋料理主席教授の佐藤月彦氏。役に懸ける熱意と日々の努力を目の当たりにし「100点をあげたい」と習得した技術に満点を与える。

 指導を始めたのは昨年8月。包丁すら持ったことのない佐藤に最初に叩き込んだのは「衛生」だった。手を洗う、まな板をふく、切ったものをバットに入れる…。さらに「切れる包丁でなければ教えた通りにはできない」と、愛用のペティナイフと牛刀をわたし「家に持って帰って練習するように」と指示。ジャガイモなど野菜の皮むきを宿題に課した。

 これまでテレビ番組などで数々の調理指導に携わってきた同氏。ドラマの料理シーンでは「だいたい手元は私だった」と明かすが、今回、代役は一切なし。「ですので完璧にできるように仕上げなければいけなかった」と料理に対する心構えと基本技術を徹底的に伝授。熱意に応えるように、佐藤も仕事の合間を縫って東京・代々木にある学校まで何度も足を運んできたという。

 「みるみるうまくなっているので、これは家で相当練習しているなと思いました」。12月26日の最初の料理のシーン。その時にはすでに技術は上達し、持ち方のちょっとした角度などを微調整するだけで十分だった。第1話、篤蔵が料理人を目指すきっかけとなった伊藤英明(39)演じる、連隊の厨房を預かる元コックとの出会いのシーン。リハーサルでは伊藤より佐藤の手さばきが軽快になってしまい「設定上それはまずい。“手の持ち方をもっと変にしないとダメだよ”と指摘するほどでした」と嬉しそうに振り返る。

 佐藤の腕前については「かなり凄い」と専門家もうなるスジのよさ。第4話で披露したじゃがいものシャトー剥き。ネット上では「プロのよう」「鳥肌が立つくらい見とれた」と包丁の運びに絶賛のコメントがあふれたが、この難易度の高い技術、学校では1年をかけて習得していくが佐藤は4カ月でマスターしてしまった。篤蔵がコックとして雇われる洋食店「バンザイ軒」でのシーンで見せたキャベツの千切りも初挑戦ながら難なくクリア。もちろん手を切ったこともあったというが、すべて浅い小さな傷。「バサっと大きく切れない。ちょっと切っただけで済むのは技術がきちんとしている証拠」と証言する。

 佐藤氏が教授として学校の生徒に伝えているのが「愛」。同じ食材や調理法でも出来上がりが違うのはなぜか。問われた時にはこう答えている。「君の作ったものには愛が足りない。自分のために作ってもおいしいものはできないよ」と。心がけ次第で結果が変わる。この精神はドラマの収録現場でも感じ取ることができたという。「自分のためだと妥協が出る。役者の方もそれが念頭にあったはずです」。観る人の心を震わせために、自分ができることを全力で。「ドラマづくりへの愛がそこにはあったように思います」。6月28日放送の第10話の視聴率は16・1%。4度目の15%超えをマークするなどスタートから好調をキープしている要因のキーワードのひとつがこの「愛」なのかもしれない。

 努力を重ね、短期間でものにした技術。佐藤に点数をつけるなら「間違いなく100点」ときっぱり答えた。初対面で手渡したナイフと牛刀。本当は「返してもらいたかったけれど」と笑うが、それでも「記念だからあげますと。こんなことは長い指導生活でも初めて」。自身の分身といえる長年の相棒を、佐藤へ授与する最高の「卒業証書」とした。

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