フット後藤「例えツッコミ」は生き延びるための苦肉の策

[ 2014年12月9日 10:46 ]

“一億総ツッコミ時代”に物申す!!司会を務める「バイキング」のスタジオでカメラに向かってツッコミを入れる「フットボールアワー」の後藤

 ボケに対する返しのうまさでテレビ番組に引っ張りだこのお笑いコンビ「フットボールアワー」後藤輝基(40)。フジテレビの情報番組「バイキング」など司会業でも重宝され、出演番組数は右肩上がり。スマートな例えで突っ込む「例えツッコミ」で注目されているが、苦肉の策で編み出した技だという。

 “代表作”といえる例えツッコミを挙げてみよう。

 ◎顔だけでなく心も不細工な相方・岩尾望(38)に対して「ブスのリバーシブルか!」。

 ◎岩尾の女性的な部分に「心の三つ編み出してきよるんですよ」。

 ◎共演した芸人の弟が9年間浪人しているという話を聞き「9年いうたら、生まれた犬がぼちぼち死ぬ頃ですよ」。

 ◎露出度の高い女性タレントの衣装に「四捨五入したら裸ですよ」。

 ◎お笑いコンビ・たんぽぽの2人の変身前と後のギャップの激しさに「高低差ありすぎて耳キーンなるわ!!」。

 「なんでやねん」のリアクションだけではなく瞬時に繰り出すオリジナルの返しは「華麗」「スマート」と称賛され、ネット上では、「ツッコミ名言集」が作られるほどだ。

 “No・1ツッコミ師”の異名を取るが、後藤本人は「苦肉の策でもあるんですよ、実を言うと」と打ち明ける。

 「同じような作業をする人間がいっぱいいるじゃないですか。ひな壇に芸人が15組くらい集まって“オイ!”(と突っ込む)みたいな。僕の声は大きいけど通らないんで、みんながワーッと言い終わった後に、“それ、○○で言うたら○○ですやん”って足して言うことで生き延びている」

 芸人にとって、大勢の中で目立つことは最重要課題。自身の通らない声を「致命的。いまだにコンプレックス」とぼやく。

 03年に「M-1グランプリ」優勝。コンビで脚光を浴びたが、たいてい注目されるのは強烈な個性を持つ岩尾のほう。さらに、お笑いブームで若手が続々と台頭し「みんなどんどん目立つけど、全然目立たれへんわって思って、収録中にフリスクを1箱ガリガリかみながら“結局きょうも駄目だった”の連続。どうすんねんと思って試行錯誤して、いろんな経験を積んで編み出したんです」

 瞬時に的確な例えで笑いを取るのは、プロとはいえ多くの引き出しがないと不可能だが「ネタ帳はないですよ。たまに携帯にメモすることはあるけど、ほとんど見ない。事前に考えて言うとだいたいウケないんですよ。“やったろう感”が出てまうんでしょうね」。瞬発力が鍛えられたのはテレビ番組といい「収録も観覧のお客さんが入ってるから、結局ライブ。こういう時はこう突っ込みなさいという指南書が書けることではないんですよ。おのおのが経験して考えること。若手芸人や芸人を志している人は自分で考えてください」

 MCとして起用されることが増え、ニホンモニターによる「タレント番組出演本数ランキング」で12年は423番組で13位、昨年は425番組で11位。年々ランクアップし、今年上半期は225番組で10位に入った。

 4月から「バイキング」の木曜MCを担当。長寿番組「笑っていいとも!」の後を継いで“昼の顔”の一人となったことに「自分ではしっくりこない」と控えめ。視聴率は3%前後と低空飛行しているが、スタートから8カ月が経過し「よりリラックスして好き勝手言える状態に少しずつなっていると思う。第1回の放送はホンマに緊張して、岩尾は震えてましたから」と笑って振り返る。

 水曜MCは「おぎやはぎ」、同時間帯の日本テレビ「ヒルナンデス!」は「ウッチャンナンチャン」の南原清隆(49)ら、バラエティーだけでなく情報番組も司会はお笑いタレントばかり。他の芸人の司会ぶりについては「あんまり見ないようにしてます。マネしちゃっても駄目でしょ」と話すが、意識している人が1人いる。「陣内(智則)さん。めちゃめちゃクールなんですよ。愛情はあるけど、人の話を平気でスパーンと切れる淡泊さがある。ヘンに優しい人はいつまでも聞いちゃうんで、凄く大事な才能やと思う。あの人は凄い」

 一方、自身は「話を途中で切れない時、多々ありますよ。性格がダイナミックじゃないというか…」と反省。ただ、裏を返せば優しさでもある。周囲の関係者は「気遣いができて礼儀正しい」と口をそろえる。先輩芸人も大勢参加するなんばグランド花月(大阪市)で収録が行われた際には、先に着席する若手がほとんどの中、最後まで座らずにあいさつする姿が目撃されている。ツッコミの例え方も、どこか相手への思いやりが感じられ、その気遣いがテレビでも愛される理由のようだ。

 姉の影響で子供の頃からお笑い番組を見て育ち、小学生の時にダウンタウンに衝撃を受けて芸人を志した。

 「運動もできない、勉強もできないってなると、モテたり目立つ要素がない。でも、特に大阪では笑わす人は一目を置かれる。小学校から中学に上がる時に、友達やったヤツが急にヤンキーになったりして、怖いでしょ。でも、笑わしてると“後藤はええか”となる。だから生きる術(すべ)みたいなとこはありましたね」

 ◆後藤 輝基(ごとう・てるもと)1974年(昭49)6月18日、大阪市出身。吉本総合芸能学院(NSC)大阪校14期生。99年にNSCの同期の岩尾とコンビを結成。現在のレギュラー番組は日本テレビ「あのニュースで得する人損する人」(木曜後7・00)、「今夜くらべてみました」(火曜後11・59)など9本。昨年8月、「行列のできる法律相談所」の収録で、交際してきた11歳年下の女性に公開プロポーズし結婚した。特技はギター。

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