問題作を発表し続けた渡辺さん 転機は日本初の心臓移植

[ 2014年5月6日 07:14 ]

08年年9月に出版した医学本「あきらめるのはまだ早い」についてインタビューに答える渡辺淳一氏

 直木賞作家の渡辺淳一さんが先月30日午後11時42分、前立腺がんのため、都内の自宅で死去していたことが5日、分かった。80歳。渡辺さんは生涯にわたって話題作、問題作を発表し続け、たびたび社会現象にもなってきた。

 渡辺さんに転機をもたらしたのは、講師として勤務していた札幌医大で行われた日本初の心臓移植手術「和田移植」だった。手術の正当性に疑問を抱いた渡辺さんは、これを題材に「小説心臓移植」(後に「白い宴」と改題)を発表、同作は直木賞候補にもなった。一方で大学には居づらくなり、30代半ばで医療の世界を去った。

 専業作家となった渡辺さんは性愛を描く作家として頭角を現した。その金字塔が映画とドラマも大ヒットした、1997年刊行の「失楽園」だ。不倫の男女の性愛を描いた同作は新聞連載時には「朝から生々しい」との批判も浴びたが、刊行されるや社会現象となった。さらに「愛ルケ」と呼ばれた2006年の「愛の流刑地」では命を奪うほどの狂おしい愛を描き、「失楽園」以来のブームを起こした。

 07年のエッセー集「鈍感力」は100万部を超えるヒットとなり、小泉純一郎元首相も引用。80歳を目前とした13年には、性的不能におちいった老医師が主人公の「愛ふたたび」を発表し、高齢者の性の在り方に一石を投じた。

続きを表示

2014年5月6日のニュース