堤真一“熱血の漫画版”反面教師に男優主演賞

[ 2011年1月18日 06:00 ]

カメラの前でクールな表情を見せる堤真一

2010年毎日映画コンクール・男優主演賞

 吉田修一氏(42)のベストセラーを李相日監督(36)が丹念に描いた「悪人」が日本映画大賞に輝いた。女優主演賞には魂の演技で世界も魅了した「キャタピラー」の寺島しのぶ(38)、男優主演賞には脳死肝移植というタブーに挑む信念の医師を自然体で演じた「孤高のメス」の堤真一(46)が選ばれた。田中絹代賞は江波杏子(68)が受賞した。

 “孤高の俳優”じゃない。信念を貫く医師として手術室を引っ張った堤が、毎日映コンで初の男優主演賞を射止めた。「チームワークで撮影が行われていたんで、主演とか言われるとこっ恥ずかしい」と謙虚に話した。

 舞台は89年の市民病院。患者を救うことだけを願い、当時の法律では認められていない脳死肝移植に挑んだ外科医・当麻を演じた。通常の医療ものの手術シーンでは、手元を追わず表情だけで作り上げることがあるが、今作ではごまかしが利かない。電気メスで豚肉を切ったり、血管の縫い方を練習するキットを家に持ち帰って特訓。美しいメスさばきを再現した。

 熱血ヒーロー医師として描かれた漫画版を反面教師にした。クランクイン前、生体肝移植など2つの手術を間近で見学。執刀医を中心に全員が無駄なく動く姿に美しさを覚えたといい「孤高と言うよりはチーム。彼(執刀医)は呼吸をするように、飯を食うように人を助けて、俺はこんなことができるんだぜとアピールしない。熱血にしたら非常にいやらしい人になってしまうから、たとえいいせりふであってもサラッと力を込めて言わないようにしました」。

 「恋のチカラ」(02年)のクリエーター役、「GOOD LUCK!!」(03年)の運航監査官役など、他人を寄せ付けない威圧感を放ちながらぐいぐい引っ張る役柄のイメージがあったが「もともと自分の中にオレが責任とらなきゃという意識があったんじゃないですかね。そういう意味では“孤高のメス”は個を意識せずにできた初めての作品かもしれない」と新たな手応えもつかんだ。

 映画製作の醍醐味について「監督をお父さんとして大家族が出来上がる感じ。年を取って視野が広がり、みんなで作っているという感覚がちゃんと分かるようになったのかなあ」としみじみ語った。

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2011年1月18日のニュース